政府は、自衛隊や海上保安庁の利用円滑化を狙う「特定利用空港・港湾」に石垣港(石垣市)と那覇空港(那覇市)を指定した。沖縄や奄美群島の施設が「主眼」だが、県内の候補地のうち今回指定に至ったのは2カ所。前向きだった石垣市管理の石垣港と、国管理の那覇空港を先行させた。2カ所の指定を弾みに、県に態度の軟化を迫りたい考えだ。
「重要拠点」→「利用」に
政府は名称を当初の「特定重要拠点空港・港湾」から「特定利用空港・港湾」に変更するなど、自治体の理解を得る上で支障となる軍事色を打ち消そうとしてきた。軍民両用を意味する「デュアルユース」という表現も封印し「民生利用が主」と言い換えた。
「たかが2カ所ではなく、重要な一歩だ」。石垣港と那覇空港を「特定利用空港・港湾」に指定できたことについて、政府関係者の一人は胸を張る。政府内には、2カ所を先行して地元へのメリットを前面に打ち出せば、心理的ハードルの低下にもつながるとの期待がある。
政府は検討段階に県内12カ所の空港と港湾を候補に挙げていた。県は慎重姿勢で同意は見込めず、第1弾で指定できる可能性があったのは、県が管理に関わっていない、那覇空港と石垣港、宮古島市管理の平良港、与那国町の新しい港湾だ。与那国は比川港湾(仮称)を提案して指定を強く要望してきたが、費用対効果の面で課題があり、見送られた。
平良港は3月に入っても指定を模索する動きがあったが、市は同意を見送った。政府内では来年の市長選後には受け入れの余地が出てくるとの期待もあり、働きかけを続けていく構えだ。
平行線たどる議論
政府は今後、事業の進展次第で県の説得も可能だとみる。今回の指定に向け、県管理以外の施設の指定について県は「関与できない」との立場を取った。政府は県管理ではない施設についても県が難色を示せば見送る構えだった。政府関係者は「幸い『口は出せない』という立場を取ってくれた」と語った。
県幹部の一人は現時点では納得できる説明を得られていないとしつつ「石垣市などが受け入れて整備が成功すれば、県も気持ちが傾く可能性はある」と漏らした。
一方、有事のリスクや米軍の使用を巡っての議論は「平行線」(県幹部)をたどる。政府は有事の住民避難でも空港や港湾を使うと説明しているにもかかわらず、指定で攻撃対象になるかどうかの議論は「水掛け論になる」として逃げ腰だ。指定を受け入れた石垣市では米軍の利用についても不安の声がある。市幹部は「米軍も(これまで以上に)使うようになるのではないかとの懸念がある」とこぼした。
県幹部は、国際法上の攻撃対象となるかという県からの質問に政府があいまいな返答を繰り返しているとして「何度聞いても国は明確に答えられないのではないか」と疑問を呈し「県民に説明できず、合意できない」と指摘した。
(明真南斗、與那原采恵、知念征尚、照屋大哲)