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能登に似た複合災害 琉球海溝で大地震が続く恐れも 台湾東部沖地震


能登に似た複合災害 琉球海溝で大地震が続く恐れも 台湾東部沖地震 台湾東部花蓮で、倒壊した建物の前に集まる消防隊員ら=3日(台湾消防当局提供、共同)
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 3日朝に発生した台湾東部沖を震源とするマグニチュード(M)7・7の地震では、全土で強い揺れを観測し複数の建物が倒壊、土砂災害も発生した。気象庁は沖縄本島地方などに一時津波警報を出し、住民らが避難する緊迫した場面も。1月の能登半島地震に似た複合災害の様相を示している。震源周辺の地下はプレート(岩盤)が重なる複雑な地下構造で今後も大地震が続く恐れがある。

警報「良い対応」

 「(逃げなくても)大丈夫というお客さんもいたが、高台に避難してもらった」。津波が観測された沖縄県・石垣島にある農産物直売所の玉代勢秀弥副店長は語る。能登半島地震の津波が頭をよぎったといい「あの津波で亡くなった人もおり、避難を急がせなければと思った。何ごともなく済んでよかった」と胸をなで下ろしていた。

 同県・与那国島のダイビングショップスタッフ、坂井裕さん(41)は客とダイビング中に「ゴー」という異常な音に気づいた。すぐに千行久雄船長(46)が待つ船に客を誘導。津波警報が出たと知った千行船長らは津波の影響を受けやすい陸に向かえば危険と判断、より沖合で待機した。千行船長は「海に囲まれた離島で津波のことは常に想定している。迅速に行動できた」と振り返った。

 東北大の今村文彦教授(津波工学)は「M7級は津波を起こす十分な規模で、気象庁が警報を出したのは良い対応だった」と評価した。

東海岸で頻発

 台湾では1999年、中部の南投県集集鎮でM7・7の地震があり、2400人以上が死亡するなどした。大きな地震は特に東海岸で頻発し、気象庁によると2018年にM6・7、22年9月にM7・3の地震があった。今回の震源に近い花蓮では、ビルの1階部分が崩れて大きく傾いたり、土砂崩れが発生したりした。

 台湾の災害に詳しい中林一樹東京都立大名誉教授(都市防災)は「強い揺れで市街地の建物が倒壊し、山間部で土砂崩れが起きて孤立した地域が出た点は能登半島地震と似ている」と指摘。今村氏も「地震規模や沿岸近くでの発生は能登と似ている。地滑りや液状化の被害も懸念される」と話した。

 一方、能登で倒壊が相次いだ木造家屋について、中林氏は「今回の被災地周辺では少ない。被害の状況に注目している」とした。

 静岡大の石川有三客員教授によると、台湾周辺の地下は、東のフィリピン海プレートと西のユーラシアプレートがねじれるように沈み込む複雑な構造をしている。

 台湾の北側ではフィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込んでいる一方、南側では逆にユーラシアプレートが沈み込む。今回の地震は北側で起きたと考えられるとしている。

 「フィリピン海プレートが台湾に向かって年8センチくらい押している場所。ぶつかっている所だからエネルギーもたまりやすい」と話すのは、田所敬一名古屋大准教授(地震学)。与那国島周辺を含めた付近の海域では、過去約100年間にM7級の大きな地震が10回以上起きているという。

 台湾メディアによると、台湾では昨年、M6以上の地震は1回しかなく、専門家は「長期間放出されなかったエネルギーが大規模地震を生み出した」と指摘。九州南方から台湾に向けて延びる琉球海溝で地震が誘発されることもあり得ると警告した。

(共同通信)