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米軍、日本の処理施設の「利用権」主張 地位協定の拡大解釈に日本側も迷走 PCB廃棄物の基地保管


米軍、日本の処理施設の「利用権」主張 地位協定の拡大解釈に日本側も迷走 PCB廃棄物の基地保管
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 全国の在日米軍施設に残存する有害なポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物の処分を巡り、米国防総省が長期保管の危険性を懸念していることが明らかとなった。だが、現存分の処分の見通しは立っておらず、米軍向けの新たな施設案まで浮上するなど日本政府の対応も迷走している。

 関係者によると、米軍は日米地位協定を盾に日本国内の既存の処分施設の優先利用権を主張。一方で、日本政府は世論の反対もあるため国内施設での処理を「想定していない」との姿勢を示す。米側が本国への持ち帰りを渋り、返還予定の基地に放置する可能性をほのめかしたこともあったという。

 米側が主張の根拠とする日米地位協定7条は、日本政府が管理する公共事業などの役務を優先的に利用できる旨などが定められている。日本国内では計画的処理を進め、現在「事業終了準備期間」であり、本来の処分期間はすでに終了している。日本政府と同等の利用条件であるにも関わらず、日本の国内法で定められた処理計画を守っていない米軍がさらに施設の使用まで求めるという、日米地位協定の特権を拡大解釈した要望をしている。

 日本国内での処理期限が迫る中、米本国へ持ち帰らせるという交渉は難航している。日本政府内では、米軍向けに新たに施設を整備する案も浮上している。関係者によると、具体的な議論までは進んでいないが、問題解決に向けた複数案のうちの一つだという。米本国で処分するか問う、本紙の取材に対し、防衛省は「米側との調整に支障が生ずる恐れがあるため回答できない」と述べるにとどめた。

 (新垣若菜、明真南斗)