prime

【記者解説】名護市長の言動に矛盾 新基地前提に政府と議論 政府と初協議会


【記者解説】名護市長の言動に矛盾 新基地前提に政府と議論 政府と初協議会 政府との初協議会を終えて、報道陣の質問に答える渡具知武豊名護市長=15日、官邸
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 名護市辺野古の新基地建設に対し「国と県の推移を見守る」とする渡具知武豊名護市長の姿勢は、かねてから「事実上の容認」と指摘されてきた。名護市と政府の初の協議会後、渡具知市長は記者団に対し、改めて「協議を進めることが、移設を認めることではない」と強調した。だが、辺野古新基地の完成を前提とした「基地使用協定」の議論を求め、米軍再編交付金を活用し、さまざまな事業を進めてきた。言動は矛盾している。

 渡具知市長は名護市議時代、辺野古移設「容認」を主張していたが、2018年の市長選では、辺野古新基地に対する賛否を示さず、市政刷新を訴えて当選した。以降も、立場を明確にせず「黙認」状態となっている。一方、県が代執行訴訟に敗訴した昨年12月には、「大浦湾側の工事が進むことがほぼ確実になった」などと述べ、住民生活への影響を避ける取り組みに注力する考えを示した。

 18年の渡具知市長の初当選後、国は市に対し、米軍再編事業の受け入れを条件とする米軍再編交付金の交付を再開。渡具知市長は再編交付金を財源とし、公約に掲げた保育料・給食費・子ども医療費無償化を実現させるなど、既に恩恵も受けてきた。

 協議会後の会見で、記者から新基地の使用協定締結を求める姿勢と自身の新基地建設に対する立場の食い違いについて説明責任を問われた渡具知市長は「市民の代表である議会の皆さんが議会を通して、一般質問などでこういった質問をされてくる。それに答えていくことで説明をしていくことになろう」と述べた。「市民の不安払拭を図ることが大事」と語るのであれば、自身の矛盾点を説明することが求められる。

 (金城大樹、嘉数陽)


<渡具知氏一問一答>政府と初協議 移設容認ではない

 政府との協議会に関する渡具知武豊名護市長と記者団の主なやり取りは以下の通り。

 ―市からの要望に対して政府側の回答は。

 「今後この協議会を活用しつつ、課題の解決に向けて取り組んでいくと」

 ―基地使用協定の締結を要望したか。

 「市民の安全安心な生活環境を確保する観点から対策が必要であると考えている。課題を解決、防止するためにも、今後協定の締結について協議させていただく。本日の協議会で要望した」

 ―(代替施設の)受け入れを前提としているように考えられるが。

 「市民の不安を払拭し、生活環境を守るという観点から協議会を行った。協議を行うことが移設を認めるということではない」

 ―締結の実現について。

 「ハードルはかなり高いものであると感じている。しかし住民の不安払拭を図るためには必要」

 ―政府の反応は。

 「これまでの経緯を踏まえつつ、今後適切に対応していきたいという回答だった」

 ―基地使用協定は代替施設の完成を前提としている。賛否と関係ないとはどういう考えか。

 「今やるべきことは、市民の不安払拭を図っていくことが大事だ」

 ―市民への説明責任は。説明の場が要求されると思うが。

 「市民の代表である議会の皆さんが議会を通して、一般質問などでこういった質問をされてくる。そのことに答えていくことで説明をしていくというようなことになろうかと」

 ―現状の回答で理解は得られるか。

 「相手が判断することで、私からは誠意を持って説明していくということだ」