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<深掘り>大型無人機トライトンが飛来 機能強化の一途か、「沖縄の基地負担軽減」実態は遠く


<深掘り>大型無人機トライトンが飛来 機能強化の一途か、「沖縄の基地負担軽減」実態は遠く 米軍嘉手納基地に着陸する米軍の無人偵察機MQ4トライトン(手前)=20日午後9時1分(喜瀬守昭撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米海軍は20日、無人偵察機MQ4トライトンの嘉手納基地への展開を開始した。政府は嘉手納基地への展開は10月までの一時的なものなどとして展開に理解を求める。だが、嘉手納基地は外来機の飛来や新たな格納庫整備などが相次ぎ、基地機能強化の一途をたどる。嘉手納基地が「沖縄の基地負担軽減」から取り残される実態が鮮明となっている。

 トライトンは情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動を担う無人機だ。比較的高い高度を飛ぶことができ、広い範囲の情報を収集する。先行して嘉手納基地に常駐配備されているMQ9は、低高度でより詳しい情報をほぼリアルタイムで入手する。防衛関係者は「役割分担だ」と説明した。

反比例

 嘉手納基地は常駐するP8A哨戒機やE3早期警戒機などに続き、昨年10月には無人機MQ9が配備され、ISR拠点としての性格を強める。

 県関係者は、夜間の飛来となったことに「最初からなぜ地元への配慮ができないのか」と強い警戒感を示す。防衛省は偵察任務のために早朝や夜間に離着陸する場合もあると説明していたが、最初の飛来が夜間飛行である必然性は不透明だ。「米軍の運用」として夜間に飛来した理由さえ県民には知らされない。

 政府は沖縄の基地負担軽減を最重要課題の一つに挙げるが、こと嘉手納基地はF15戦闘機の退役に伴うF22戦闘機などの巡回配備によって、騒音激化など負担の増加が続く。騒音最大値が100デシベルを超える月がほぼ毎月発生している。

 嘉手納町議会の當山均基地対策特別委員長は「嘉手納以南は基地の整理縮小計画があるが、嘉手納基地は反比例するように基地機能が強化されている」と現状に違和感を持つ。相次ぐパラシュート降下訓練や防錆(ぼうせい)整備格納庫、ヘリコプター格納庫が建設される計画も進む。「ますます住民は生きづらくなる」とため息をついた。

裏腹

 今月10日、玉城デニー知事が東京で嘉手納基地単体の負担軽減を訴えたのも、嘉手納の負担軽減を再びクローズアップさせる狙いがあった。

 政府は特に米軍の運用には関与できず、有効な負担軽減策を打ち出すことができていない。1996年に日米両政府が締結した騒音規制措置など、従来の負担軽減策は強制力がなく、順守するかどうかは米軍の判断に委ねられている。

 今回、トライトンの飛行が加わる分、有人機の運用を減らすなど嘉手納基地周辺の負担軽減策を取るかどうかについて本紙は14日、防衛省報道官の記者会見で尋ねたが、茂木陽報道官は「他のアセットに係る運用の減少など現時点で具体的にお示しできるものはない」と述べた。

 防衛省関係者は「有人機の運用が減る可能性はあると期待したいが、米軍の運用なので不確定要素が多い」と明かす。

 沖縄の基地負担軽減に「全力で解決に取り組む」(木原稔防衛相)という言葉とは裏腹に、嘉手納基地の負担軽減は見通せない。

(明真南斗、知念征尚、金盛文香)