prime

高率補助の「ずれ」改善必要 獺口浩一氏(琉球大教授・財政学)<識者の視点・沖縄県議選2024>(3)


高率補助の「ずれ」改善必要 獺口浩一氏(琉球大教授・財政学)<識者の視点・沖縄県議選2024>(3)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ―今後の沖縄振興について、本紙の県議選立候補予定者へのアンケートでは計画の「単純延長」「将来的な廃止」より、特殊事情の変化を踏まえた制度設計や見直しを指摘する意見が目立った。
 「従来の振興政策の枠組みで課題を解決・改善できるのかという視点は必要だ。競争力や付加価値を生む新たな展開を作りだせるかがポイントになる。沖縄も人口の減少過程だが、政策次第で維持できる可能性は十分ある。土地は限られても特色ある資源が豊富だ。民間の力を押し上げるために公共の政策支援があり、議員の在り方としても新しい価値観や枠組みを検討し発信するなど、その機会をつくることが求められてくる」

 ―税の軽減措置や高率補助は今後も「必要」と回答した人が多い。
 「実証研究でも明らかだが、高率補助は制度の本質として、補助率が高い事業が優先され、優先度の高い事業への影響や事業規模の拡大などにつながる面がある。行政としても裏負担が小さくなるのでインセンティブが働く。その問題点を踏まえるなら有効な政策ではない」

 「基地があることで道路や水道管を効率的に配置できないなど、国の政策により地方の事業にゆがみが生じている場合は高率補助を行うエリアがあっていいが、現状は広すぎるのではないか。公共事業を頼りにする産業は大きく恩恵を受けるが、その状況が続き、制度の目的と行政や民間が期待するところがずれている。改善は必要だろう」

 ―税の軽減措置はどうか。
 「(メニューが)多岐にわたるため効果の検証が必要になる。揮発油税など沖縄の不利性を踏まえ、競争条件を整えることにつながる分野なら、検証は必要だが、措置が有効な面はある。一方、企業間で連携してグローバル展開する時代に、沖縄に企業を立地・定着させるのに優遇措置がどの程度有効なのかなど、従来制度の見直しや廃止を検討する視点も大事だ」

 ―県議会にはどういった役割、政策論議を期待したいか。
 「行政に対峙(たいじ)し、出される議案をチェックする姿も大事だが、役割がそこに行き過ぎていないか。地方議員もアグレッシブに新たな提案をし、課題を解決することは将来への希望をつくることにつながる。未来志向の議論に政党はあまり関係ないと思う。知見を生かし、躍動感のある政治を展開してほしい」