2019年10月の火災で焼失した首里城正殿は、5月27日までに屋根や軒回りの工事が終わり、再建工事が着々と進んでいる。6月から25年3月ごろにかけては、県が首里城復興基金を活用して調達・制作している赤瓦や小龍柱など22点の製作物が国へ引き渡される予定だ。26年秋の正殿再建に向けた工事は本年度中に屋根の瓦ぶき、外壁の塗装が行われる。再建工事は最盛期を迎える。
県は首里城の再建を願い、県へ寄せられた寄付金「首里城復興基金」を活用し、正殿整備のための彫刻物や木材、瓦などを調達。24年度は「首里城復興基金事業」として11億8300万円の予算を計上した。
本年度は、正殿の顔となる唐破風妻飾(からはふつまかざり)など14点の木彫刻のほか、小龍柱などの石彫刻6点、瓦類2点の計22点が仕上げや設置のために国に引き渡される。正殿の工事を担当する沖縄総合事務局開発建設部によると、夏ごろには屋根に瓦を設置する瓦ぶきの作業に本格着手する予定だ。
「令和の再建」では、県や国が再建に向けた議論を進める過程で古写真などが見つかり、今まで分からなかった新たな知見が多数発見された。正殿2階の玉座にあたる御差床(うさすか)に飾られていた扁額は、平成の復元時は具体的な仕様が分かる史料がなく、他の琉球扁額などを参考につくられたため木板が赤色だったが、「尚家文書」に記述が見つかり、黄色へと生まれ変わる。また、前回の復元時にはその正体を突き止めることができなかった首里城正殿独特の赤色も、古文書の記述に基づき往時の色へ近づく。
国の首里城復元に向けた技術検討委員会で委員長を務める琉球大名誉教授の高良倉吉氏は、新たな知見が多数発見されていることについて「焼失した(平成の)首里城よりも、限りなく往時の首里城に近づくことになる」と期待する。
県首里城復興課の担当者は、再建中の首里城は、足を運ぶたびに新しい正殿の姿を見ることができるとし、「(完成するまで)どんどん変わる首里城の姿を見てほしい」と話した。
(與那原采恵)