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投票率は過去最低、国政・知事選への影響は?<記者が見た沖縄県議選>2/2


投票率は過去最低、国政・知事選への影響は?<記者が見た沖縄県議選>2/2 イメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 16日に投開票された第14回県議会議員選挙は、玉城デニー知事を支持する県政与党が過半数割れし、大敗した。野党の自民が躍進し、与野党構成が逆転した選挙結果や今後の政局の行方などを、本紙県議選取材班の記者が振り返った。

<各選挙区>候補者乱立、共倒れも

 A 各選挙区の動きはどうだったか。

 C 浦添市区では赤嶺昇議長の後継が落選した。社大現職との最後の1議席の争いが予想されたが、2020年県議選後に与党を離れた赤嶺氏から「オール沖縄」支持票が社大現職に流れた影響もあったのだろう。

 E 与野党が分け合うと予想された宮古島市区は野党が2議席を独占した。野党側の陣営には、前宮古島市長の下地敏彦氏の姿もあって話題になった。

 A 中頭郡区は革新地盤の東側地域から、40年ぶりに保守候補が当選した。西側の現職と票をすみ分け、企業票は東側の新人に流すよう動いていた。新人の動きが弱く、陣営はかなりげきを飛ばされたようだが、最後は企業票を手堅く取りまとめて、組織力の強さが垣間見えた。

 B 国頭郡区ではやんばる初の女性県議が誕生した。選挙期間中に妊娠を公表したことが印象的だった。

 E 定数4のうるま市区は過去最多の候補7人のうち5人が保守系で混戦だった。告示前の中村正人市長の激励会ではその5人が壇上で紹介され、緊張感があった。

 C 島尻・南城市区は前回、共産候補が当選し社大候補が落選したが、今回は逆の結果になった。お互いの地盤にも入り込んだ得票争いが激しかった。

 D 定数2の糸満市区は、玉城知事を支持する候補の得票が3~4位で並び共倒れした。2位の中立・維新新人の得票は4729票と今回の全選挙区で最少で、候補者乱立の中で当選が舞い込む結果だった。

<投票率>無党派層、足を運ばず

 B 過去最低の投票率(45.26%)だった。

 D 無党派層の票が減り、組織力や動員力がある自公には有利に働いたのではないか。

 C 初めて50%を切った前回も、自民が議席を増やす結果だった。「オール沖縄」からすれば、無党派層が投票所へ足を運ぶような「風」を吹かせることができなかった。

 A 前回は新型コロナウイルスが選挙活動を大幅に制限したが、今回は日常に戻る中での選挙だった。低下の要因に向き合う必要がある。

 E 裏金問題をはじめ政治不信が強まって投票を棄権した人もいるだろう。「逆風が吹きすぎた」という見方もできる。

 B 取材中に「これ何の選挙ですか」と声を掛けられたことがあった。県議選があることさえ知らなかった県民は多い。

 E 県議会の役割の分かりづらさもあるのかもしれない。県民になじみが薄いのだろうか。

 D ネット中継もあり開かれてはいるが、例えば県庁周辺のデジタルサイネージなどでも議会中継をしてもいい。関心をもってもらえる、前例のない仕組みが必要だ。

 C それはわれわれメディアにも言える。

<政局への影響>知事選前の国政選挙が焦点

 E 今後の政局への影響はどうか。

 B 自民を中心とする勢力が県議会で過半数を握るのは仲井真弘多県政下の2008年以来だ。2年後の知事選での県政奪還にも勢いがついた。
 A 開票作業が進む中、自民躍進が確実になると県連幹部は「もうやりたい放題やる」と興奮気味だった。

 C 選挙戦中に論点になった給食費無償化や県ワシントン事務所駐在費削除など、予算案審議で自民は要求を通しやすくなった。

 D 議会の同意が必要な副知事人事ももめるだろう。玉城知事は厳しい議会運営を迫られる。

 C 次の知事選までには衆院解散・総選挙や参院選がある。そこが次の政局の焦点だ。

 E 知事選や国政選挙は選挙区が広く、県議選や市町村の首長選とも性質は異なる。辺野古などの大きな問題がより投票行動に反映されやすい。

 A 「オール沖縄」側は衆院4区の候補者調整にまだめどがついていない。4区と区域が重なる県議選の選挙区で今回与党は多くの落選者を出した。影響はあるだろう。

 B 玉城知事の3選出馬への注目度も高まる。オール沖縄にとっても自民にとっても、来る選挙で勝ち続けることが次の知事選への足がかりになる。


座談会出席者
佐野真慈(キャップ、政経グループ)
石井恵理菜(同)
當山幸都(同)
梅田正覚(中部報道グループ)
金城大樹(北部報道グループ)