prime

野党躍進の要因は? 不発となったあの「争点化」<記者が見た沖縄県議選>1/2


野党躍進の要因は? 不発となったあの「争点化」<記者が見た沖縄県議選>1/2 沖縄県議会(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 16日に投開票された第14回県議会議員選挙は、玉城デニー知事を支持する県政与党が過半数割れし、大敗した。野党の自民が躍進し、与野党構成が逆転した選挙結果や今後の政局の行方などを、本紙県議選取材班の記者が振り返った。

<選挙結果>野党組織力で躍進

 B 県政与党が大敗した結果をどうみるか。

 A 与党と野党・中立で「20対28」の結果は誰もが予想できなかったのではないか。

 D 自民公認の20人全員当選は一番のニュースだろう。自民20議席は1984年以来で、過去最多タイだ。

 B 「オール沖縄」を構成する与党各党は「寄り合い所帯」の弱みが出た。党勢拡大が重視され選挙区調整や票の配分ができていなかった。自民は一枚岩で組織の強みが出た。調整役となる重鎮の存在も大きかった。

 C 岸田政権の支持率が20%を切り国政では「裏金」の逆風が吹き荒れているが、沖縄では影響は限定的だった。

 B 共産を除けば、ポスターやのぼりに「オール沖縄」がほとんど書かれていなかった。候補者の訴えからも特には聞かれなかった。

 E 立民、共産、社民は党幹部らが東京から続々と応援に入った。県外の各選挙で連敗している自民逆風の流れをそのまま持ち込もうとしたが、地域とマッチしていない演説もあった。

 A 選挙戦中の知事や各党幹部らによる「大演説会」は、どれだけ効果があっただろうか。

 B 社民の一部が立民に合流し初めての県議選だったが、候補の得票合計は立民より社民が多かった。社民はいまだに沖縄で強い人気がある。立民にとって、旧民主党政権以来、沖縄が「鬼門」であり続けている。

 D 公認3人全員が当選した社大は8年前の議席水準に戻した。共産、立民、社民はいずれも擁立候補のうち3人が落選した。党勢をどう立て直すか今後に注目したい。

<政策論争>「給食費」争点化も不発

 A 政策論争は深まったか。

 B 物価高対策は県民の目の前の生活に直結する課題でさまざまな候補が掲げた。ただ暮らしをどう向上させるかという具体策が見えず、違いが分かりづらかった。

 D 玉城デニー知事は告示を前に、中学給食の無償化を打ち出した。与党が過半数を取れなければ「実現できなくなる」と訴えた。

 E 県の補助が半額であることや、小学生が含まれていないことを巡って自民候補も積極的に取り上げて批判した。

 C 選挙戦に入って知事は補助内容の軌道修正を迫られた。知事自ら争点化した政策が不発に終わった形だ。

 D 辺野古問題は与党系の候補の演説でよく耳にした。ただ、これまで選挙で示された民意に政府が応じない状況が長引き、地域選挙の性格が濃い県議選で有権者がどれだけ判断材料に生かしたか、疑問もある。

 C 公明は県本部が辺野古に「反対」の姿勢だが、辺野古の代執行を進めた国土交通相の所属政党でもある。県本が反対を働きかける動きは今後出てくるだろうか。

 A 沖縄振興特別措置法は2026 年度までに見直されるが、論戦はなかった。

 E 内容の難しさもあって、有権者にはなかなか限られた時間では訴えられない。本来なら沖縄の自立経済に関わることで、県議選でも議論になっていいと思う。


座談会出席者
佐野真慈(キャップ、政経グループ)
石井恵理菜(同)
當山幸都(同)
梅田正覚(中部報道グループ)
金城大樹(北部報道グループ)