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【記者解説】相次ぐ性犯罪、米軍の再発防止策見えず 被害者置き去り、補償も課題


【記者解説】相次ぐ性犯罪、米軍の再発防止策見えず 被害者置き去り、補償も課題 県への説明後、県庁を後にする第18航空団司令官のニコラス・エバンス准将(中央)、マシュー・ドルボ在沖米国総領事(右)=27日午前9時46分、那覇市(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米海兵隊員による不同意性交致傷事件が5月に発生していたことが判明した。昨年12月には米空軍兵による少女誘拐暴行事件が発生していたことが明らかになった直後で、相次ぐ性犯罪は県民に大きな不安と衝撃を与えている。

 一連の米軍人による事件を巡っては、県警、地検といった捜査当局と外務省が発生や起訴について把握していた一方、県や沖縄防衛局には情報が知らされていなかった。再発防止や被害者への補償の面で大きな問題がある。

 性犯罪事件では特に被害者の人権の保護が最優先されることは当然だ。身勝手な犯罪の犠牲となった人に捜査、公判、補償やその後の生活でさらに負担をかけることは絶対にあってはならない。

 一方、行政として事件を未然に防ぐための対応も不可欠だ。被害者のプライバシー保護と再発防止の取り組みは矛盾するものではなく、個人情報を伏せて事件発生の情報は共有できたはずだ。

 少女誘拐暴行事件で、3月に米空軍兵長の男が起訴された際、外務次官が駐日米大使に抗議した。5月の海兵隊員による事件までの間、在沖米軍全体で規律はどうなっていたのか。外出時間の制限措置など強い対応をしていたのかについて米軍は明確な回答をしておらず不透明だ。

 政府は米側に再発防止を強く働きかけたというが、どれほどの実効性があったのか。3月に一度抗議をした後、そのままになっていなかったかを明らかにして検証する必要がある。少なくとも、県民の抱く不安を解消するには至っていない。

 被害者の補償を担う沖縄防衛局が事件の発生を把握していなかったことで、被害者の救済に遅れが生じる恐れもある。政府と県が協力し総力を挙げて被害者の保護と救済に当たり、米軍に強い再発防止策を講じさせなくてはならない局面だ。行政間の連絡不備で被害者を置き去りにしてしまっていないか、検証が必要だ。 (沖田有吾)