8月1日は県条例が定める「観光の日」。沖縄の観光振興を担う一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)は、前身組織から数えて7月で創設70年を迎えた。沖縄観光の強力かつ効率的な推進体制を構築するため、行政と民間事業者のパイプ役を担う。これまで観光客の誘致、受け入れ、観光統計データなどの分析、観光関連事業の企画など、多岐にわたる業務を担ってきた。一方、県の外郭団体としての制約も多く、人材や予算の確保にも課題を抱えている。
アクアポリスも所管
沖縄観光は戦後に慰霊訪問団が増加したことによって注目が集まり、1954年に任意団体の沖縄観光協会が設立された。以後、県リゾート開発公社や県観光開発公社などと統合を重ね、96年に沖縄観光コンベンションビューローとなった。
沖縄観光は75年の沖縄国際海洋博覧会を皮切りに、2000年の九州沖縄サミット、ゆいレール運行や格安航空会社(LCC)の就航開始などで発展を続ける。ビューローは沖縄コンベンションセンターなど、主要施設の指定管理も受託。一時はアクアポリスも所管した。
96年に沖縄ビジターズビューローに沖縄コンベンションセンターとオキナワコンベンションビューローが統合し、現在の財団法人が発足した際に掲げられた観光目標は入域客500万人。2003年度に達成すると、18年度には1千万人を超えた。17年に観光庁の広域連携DMO(地域づくり法人)にも認定され、県のみならず国とも連携を強めた。
県の外郭団体として、観光やコンベンションに関する施策を支援する役割を担う。歴代会長は現在の下地芳郎氏で16代目。琉球政府行政主席や県知事らがトップを務めていた時期もあったが、現在は理事の互選による専従職だ。
来訪客の減少など沖縄観光が冷え込んだケースとして、2001年の同時多発テロ、19年の首里城火災、20年からのコロナ禍の時期が挙げられる。その際も各種キャンペーンを打ち出し、業界支援や行政への要請活動など官民一体のプロモーションを主導してきた。
生え抜き育成を
職員数は147人。うち正職員は38人で、ほかは属託(しょくたく)や出向などで構成する。観光立県を掲げる沖縄で専門人材が不可欠だとして、観光業界からは多くのプロパー職員の登用を望む声が多く上がる。
組織としても人手不足を課題に挙げているが、県の規定でプロパー職員の定数が決まっており、新たな採用や給与水準の改定の際にも県の承認が必要となる。観光業界からは地域観光行政のプロを育てるため、新卒採用からの生え抜きの育成が必要だという要望もある。
運営予算のうち8~9割が県からの委託事業費だ。しかし、委託事業では収益は上がらない。人件費や事務所の賃借料など運営費を賄うため、管理するブセナ海中公園や旧海軍司令部壕の入場費などで赤字を補填(ほてん)する状態が続いている。
県からの委託事業に関しては、県がビューローを指名する特命随意契約によるものがほとんど。県は独自財源の確保を促そうと、今後は一般公募での委託を主流にしたい考えだが、OCVBの担当者は「どこにでもできることではない。調査ものなど、観光に特化した組織だからこそできることもある」と話す。
100年目に向けて
ビューローの将来像について、沖縄経済同友会の渕辺美紀代表幹事は「観光産業のみならず、必要な組織と連携することで効率的な事業展開ができる」と指摘し、シンクタンクと連携した幅広い分析業務を手がけることなどを例に挙げた。
観光経営に詳しい沖縄キリスト教学院大学の上地恵龍副学長は、宿泊税を活用した観光マーケティングを進めるハワイの事例を沖縄も学ぶべきだとして「活動を柔軟にするため、宿泊税の予算を活用するなどし、OCVBに自主裁量権が必要だろう」と提言する。ビューローの下地芳郎会長は「OCVBがやるべきことはまだまだ多い。観光に特化した組織があって良かったと思ってもらえるように、100年目に向けて頑張りたい」と語った。
(與那覇智早)