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那覇軍港の移設、冊子で“機能強化”は打ち消し 防衛省が作成 浦添沖、月内にもボーリング調査へ 沖縄


那覇軍港の移設、冊子で“機能強化”は打ち消し 防衛省が作成 浦添沖、月内にもボーリング調査へ 沖縄 パンフレットの表紙で示された米軍那覇港湾施設の浦添への移設完了後のイメージ図(沖縄防衛局ウェブサイトより)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市移設について、防衛省は事業を紹介するパンフレットを作成し、沖縄防衛局のウェブサイトで公開を始めている。イメージ図を掲載したほか「代替施設を速やかに建設し、50年来のプロジェクトである那覇港湾施設の返還を早期に実現する必要がある」と強調した。早ければ月内にもボーリング(掘削)調査を始める方向で準備を進める中、機能強化の印象を打ち消すことで反対の根強い事業への理解を得る狙いがある。

 パンフレットは、1974年に日米両政府が那覇軍港の移設条件付き返還で合意したことを強調。「跡地利用のポテンシャルが高く、その返還は県全体の発展に資する」と意義付けた。

 軍港の代替施設について「現在の機能維持を目的としている」と説明。根拠として事務所や倉庫など現在の那覇軍港に存在する建物などの整備を予定していることを挙げる。だが、軍港としての機能を大きく左右する入港可能な艦船のサイズなどは明確にしていない。移設先の水深が深いことから、現在よりも大型の船が使用可能となる可能性もある。

 那覇軍港でたびたび実施されているオスプレイなど航空機の離着陸が「現在の機能」に含まれるかどうか、国と県で見解が分かれているのが実情だ。含まれていないと県は解釈するが、政府は含まれるとしている。

 「現在の機能」そのものが定まっておらず、代替施設が現有機能にとどまるものかどうか判断する基準があいまいだ。

 Q&Aは、空母や原子力潜水艦の寄港があるかどうかという問いに「運用する計画があるとは認識していない」と説明した。ただ、これまでも防衛省は、別の事業などで「(問われた)その時点では正式に計画が決まっていない」という意味で「計画はない」などと説明しながら、運用開始後に変えてきた経緯がある。

 例えば、陸上自衛隊石垣駐屯地で着工前の住民説明会で防衛省は「石垣島で米軍と共同訓練を行う計画は全くごさいません」と断言したが、日米共同訓練で繰り返し使用している。

 与那国駐屯地では当初計画になかった地対空ミサイル部隊が配備されることになった。

 現在の那覇軍港について遊休化しているという指摘に対してQ&Aは「平素から実際に使用されており、遊休化していない」と反論した。一方、使用回数は減少傾向をたどった後、2003年以降は非公表で、パンフレットでも具体的な使用実績は示していない。

 防衛局はボーリング調査に向けて占有許可の協議申請を那覇港管理組合に提出している。もともと二つの行政手続きが必要とされており、うち一つの岩礁破砕に関する手続きについては県が2日に了承した。防衛局は占有許可を得られ次第、ボーリング調査を始める構えだ。

 (明真南斗、知念征尚)