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【識者談話】沖縄県民守るため外交必要 デニー知事訪米 飯島滋明・名古屋学院大教授


【識者談話】沖縄県民守るため外交必要 デニー知事訪米 飯島滋明・名古屋学院大教授 飯島滋明名古屋学院大教授
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 玉城デニー知事の訪米は「個人の尊厳」「基本的人権」を守るための外交であり「外交と防衛は国の専管事項」との主張が憲法的に正当でないことを示す。

 最近、沖縄では相次ぐ米兵性犯罪がまた大問題となっている。8月2日、66人の憲法研究者は「相次ぐ米兵性犯罪に関する憲法研究者抗議声明」を出し、「性犯罪は個人の性的自己決定権や尊厳(憲法13条)を根底から破壊する、卑劣極まりない犯罪」と批判した。国民を守るのが国の役割である以上(憲法前文等)、犯罪再発は断固、阻止しなければならない。ただ、歴代自公政権は米兵犯罪をなくす外交をしてこなかった。

 岸田自公政権も日米軍事協力を深化させる外交には積極的な一方、相次ぐ性犯罪を米国に強く抗議したり、不平等な「日米地位協定」改定にむけた外交等、再犯防止のための外交はほとんどしていない。これでは再び被害者が出る。辺野古新基地建設の強行、パラシュート降下訓練等の軍事訓練、有機フッ素化合物(PFAS)汚染や騒音などは「戦争や軍隊により生命や身体、健康を奪われたり脅かされたりしない権利」である「平和的生存権」(憲法前文など)を脅かす。

 「外交と防衛は国の専管事項」と主張されることがあるが、憲法に自治体外交を禁止する規程はない。むしろ国が国民を守る外交をしない場合に「外交と防衛が国の専管事項」との立場を貫けば、沖縄県民の人権は守られない。日本国憲法では「基本的人権の尊重」が基本原理とされ、自治体の首長にも「憲法尊重擁護義務」(憲法99条)が課せられている以上、県民を守るための積極的外交が自治体にも求められる。

 国が国民を守る役割を果たさない場合、その必要性は一層増す。デニー知事訪米は沖縄県民の「個人の尊厳」「基本的人権」を守る外交として評価されよう。 

(憲法学・平和学)