米兵による性的暴行事件が相次いで発覚し、県民が憤る中で訪米している玉城デニー知事。現地時間11日に米国務省、国防総省の担当者と面談し、事件への懸念を直接米政府に伝えたが、両省とも対応は課長級の日本部長にとどまった。両者は「凶悪事件が発生したことは遺憾」だとしたが、再発防止などについて具体的な進展は示されず、自国軍が駐留する沖縄における被害や地域社会の反発と真摯(しんし)に向き合わない姿が浮き彫りになった。
過重な米軍基地負担の解決促進を図るため、1985年の西銘順治知事を皮切りに、これまで6人の知事が合計23回、訪米し米政府に要請などをしてきた。
大田県政や稲嶺県政の初期までは、日本では大臣に当たる長官級が面談に応じる機会もあったが、その後はだんだんと次官や次官補代理などに“格下げ”された。
辺野古新基地建設反対を明確に打ち出した翁長県政以降は、初訪問時を除いて日本部長級の対応が通例となっている。
今回の訪米で県は、日本部長よりも上のクラスとの面談を要望。大使館ルートに加え、県のワシントン駐在も通じて両省に考慮を求めた。
県関係者の一人は「暴行事件が相次ぐ中、今回は訳が違う」と強調していた。だが、実際には今回も日本部長の対応となった。
県関係者は「11月の大統領選の結果次第で長官は変わるが、事務方は大きくは変わらない」と語り、要請内容は引き継がれるとの見方を示した。
一方、別の関係者は「もっと上のクラスが対応してもよかったのではないか」と語り、米側の対応を疑問視した。
昨年12月に発生した米空軍兵士による少女誘拐暴行事件を巡っては、今年3月に被疑者が起訴されていたにもかかわらず、エマニュエル駐日米大使は5月に八重山諸島を訪問し、事件には一切触れずに抑止力を強化する重要性を訴えていた。
中国などとの対抗姿勢を強め、自由と民主主義の旗手として防衛力強化を進める米国だが、日米共同訓練の拡大など地域の負担が強まる中で、特に一連の事件を巡っては基地が地域に及ぼす悪影響については重視していないかのような対応を繰り返している。
面談を終え、玉城知事は「米国が(基地被害や住民の怒りと)向き合わなければ、日米安全保障体制がなお一層ゆがみが出るという危機感を持つべきだ」と訴えた。
(石井恵理菜、知念征尚)