衆院選は県内小選挙区で与野党が2議席ずつ分け合う形となったが、全国的には立憲民主や国民民主、れいわ新選組といった野党勢力が大幅に議席を伸ばし、自民・公明の連立与党は過半数割れした。自公政権は、衆院で維持してきた3分の2以上の議席を背景に、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設など反対が根強い政策も強行してきた。議会構成の変化は国の安全保障政策の転換につながる可能性もある。
政党議席数でみると新基地建設工事について、衆院選の公約などで「中止」や「日米間で十分に協議」など、計画の見直しに言及していたのは立民、国民、れいわ、共産、社民で、議席数は194議席を占める。
議席を増やし、存在感も増す国民は当初、辺野古新基地建設について政策パンフレットで軟弱地盤の問題に触れ「いったん停止し、沖縄の民意を尊重し、日米間で合意できる『プランB』の話し合いを行う」と掲げていた。だが、選挙期間中に示された更新版では「プランB」の文言は消え「普天間基地の代替機能を計画通り果たすことができるのかなど日米間で十分に協議」と変更した。
国民の榛葉賀津也幹事長は選挙期間中、本紙のインタビューに「辺野古移転は、すぐやらなければならない」と答え、辺野古新基地計画の見直しに本腰を入れるかは見通せない。
立民も新基地建設は中止し米国に再交渉を求めると掲げたが、野田佳彦代表は中止後に「辺野古へ逆戻りしない」とは断言していない。
政府関係者の一人は「日米政府間での合意は強い。覆すことは難しいだろう。できるなら旧民主党時代でもできたと野党もよく分かっているはずだ」とけん制した。
日米地位協定についても改定勢力が議席を積み増した。11月11日に見込まれる首相指名選挙を前に、政権の枠組みは流動的な状態が続くが、地位協定の改定は国政で強い推進力を得た形だ。
ただ、自民党も石破茂首相は持論で改定を訴えているものの、今後党内で議論する段階で、党としての公約に掲げるには至っていない。本格的に始まった自民と国民の協議でも経済対策などが中心となる見通しで、安保分野が深まるかは不透明だ。石破首相がイメージする地位協定改定像も具体的には示されない中、県幹部は「(基地負担軽減という)県民の目指す方向と異なっては困る」と語り、県民の要望に沿った改定の早期実現を訴えた。
(’24衆院選取材班)
(おわり)