15日午前9時、衆院選の公示日。参政党公認で1区から出馬した和田知久氏の第一声で、応援演説のマイクを握ったのは2区で出馬した今野麻美氏だった。懸命に思いの丈を訴える候補者2人を取り囲む中に支持者は少なく、報道カメラだけが見つめていた。
2020年に結党した新興勢力の参政党は選挙経験のない新人3人を県内1~3区に擁立した。県内の公認議員は沖縄市議1人だけ。今選挙での影響力は未知数だったが、3氏はそれぞれの選挙区で一定の存在感を示した。
激戦となった3区では、事実上の一騎打ちとなった屋良朝博氏=立民=と島尻安伊子氏=自民=の票の取り合いに大きく影響した。「候補者が増えれば票の分散は必然。あまり考慮していない」(島尻陣営関係者)との見方もあった中、同区の参政公認候補の新城司氏は約1万2千票を獲得。約1700票差の大接戦を繰り広げた屋良氏と島尻氏にとっても、無視できない数字だった。
一方、同党は当初から選挙区での当選は念頭になく、全国での議席増を目指し比例票に的を絞っていた。もくろみ通り、県内比例でも約2万8千票を積み上げ、九州比例ブロックでの1議席獲得につなげた。27日、沖縄市の選挙事務所で開票速報を見守っていた陣営関係者は「選挙区は難しいと分かっていた。目標は3人で約3万5千票。おおむね達成できた」と狙い通りの結果に安堵(あんど)の表情を浮かべた。
自公過半数割れとなった今選挙。県内4選挙区では、自公勢力と「オール沖縄」勢力が激戦を繰り広げる中、参政のように、比例票の積み上げによる党勢拡大を図る動きも目立った。投票率が過去最低の49・96%の中、投票総数が少ない中で当落に影響を及ぼした。
4区の山川仁氏が比例復活当選したれいわ新選組も自民や立民など既存政党のような県内組織はない。ただ、同党の都道府県別の比例得票率で沖縄は21年衆院選、22年参院選のいずれも全国1位だった。沖縄を重点地域に位置づけ、23年には山川仁氏擁立を発表し、浸透を図ってきた。
支持層が重なるオール沖縄を論戦のターゲットに据え、支持層の切り崩しを図る戦略も奏功した。山川氏は知事選などへの対応について「擁立が可能であれば調整を進めたい」とするなど、今後も県内の重要選挙で立候補者を擁立する考えで、勢力拡大に意欲を示した。 (’24衆院選取材班)