衆院選で自民・公明の連立与党が過半数割れしたことを受け、国会運営で政府・与党が野党の意見を聞き入れる場面が増えている。
国民民主党は自公との政策協議を進めるなどキャスチングボートを握る。政策集では、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設問題について「日米間で十分に協議」としていたが、沖縄県連代表も兼務する榛葉賀津也幹事長は8日の定例会見で、計画の見直しは掲げていないことを認めるなど大幅に内容を後退させている。だが、当初の表現もウェブサイトに掲載したままで、混乱が生じている。
国民は当初の政策集では辺野古新基地建設について、軟弱地盤の問題に触れ「いったん停止し、沖縄の民意を尊重し、日米間で合意できる『プランB』の話し合いを行う」と記述し、辺野古とは別の道を模索する考えを示していた。
一方、選挙期間中に琉球新報の取材に応じた榛葉氏は「辺野古移転は、すぐやらなければならない」と語り、一転して辺野古移設を認める姿勢を示した。
その後、選挙中に更新された政策集では「普天間基地の代替機能を計画通り果たすことができるのかなど日米間で十分に協議」すると記述。「プランB」は削除しつつも、移設計画について米側と協議するとの方針は残していた。
榛葉氏は8日の会見で、移設計画の見直しはないかを問われ「そうだ」と回答した。ただ、政策集は「プランB」を掲げた当初版も8日夕現在、閲覧可能な状態だ。ウェブサイト上の「政策各論」のページにも当初の表現が残り、選挙期間中もそのままだった。有権者は見直しを掲げていると思って投票先を決める材料にした可能性がある。
榛葉氏は改選前は外交安全保障を担う議員が少なかったと釈明した上で「しっかりブラッシュアップし、沖縄の皆さんの声も聞きながら対処したい」と述べた。
政策集ではまた、日米地位協定の改定に関し「米軍、軍人、軍属、その家族に対する国内法の原則順守、日本側の米軍基地の管理権などについて米国と協議」すると記載した。だが、玉木雄一郎代表は5日の会見で「(国内法の)適用除外を受ける者が広すぎないか」と国内法適用除外の対象を絞り込む必要性を訴えたが、国内法の適用や基地管理権には言及しなかった。
国民はキャスチングボートを握ったが、政府予算案の審議や内政・外交全般の質疑が行われる衆院予算委員長を立憲民主党から出すことが決まるなど、与党過半数割れの影響はさまざまな党に及ぶ。立民関係者は「われわれの意見が通るのが、現実的になってきた」と感触を語る。与野党が対立する案件も与党が圧倒的な議席数を盾に通してきたこれまでの国会運営と異なり、野党も含めた議論が行える環境が整いつつある。
基地問題や政治色の強さが指摘されてきた沖縄関係予算の在り方も含め、真摯(しんし)な議論が求められる。
(知念征尚、明真南斗)