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馬と心を通い合わせて あおぞらニライカナイ牧場


馬と心を通い合わせて あおぞらニライカナイ牧場 馬具を使わない乗馬「オールフリー乗馬」が楽しめるあおぞらニライカナイ牧場の玉城真代表(右)と久高正光さん 写真・村山望
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

馬具を使わない乗馬体験を提供

南城市玉城。百名ビーチの近くを車で走らせていると、サラブレッドからポニーまでさまざまな馬たちがくつろぐ様子を目にしたことがある人もいるだろう。ここは「あおぞらニライカナイ牧場」。気軽に乗馬体験ができるこの牧場の大きな特徴は、鞍(くら)やハミなどの馬具を一切使わない“はだか馬”に乗れる「オールフリー乗馬」だ。まさに人馬一体となって馬の体温をじかに感じることができる。玉城真代表(61)は「全国的にもほぼ例がありません。馬になるべくストレスを与えず、信頼関係を築いて一緒に前に進む乗馬です」と話す。

あおぞらニライカナイ牧場では全部で7頭の馬を飼っている。間近で見ることのできる馬の瞳は、まん丸としていていとおしい。ゆっくりと歩みを進める様子は、堂々としている一方、大らかで優しさも感じる。

大きなサラブレッドも馬具なしで乗りこなす玉城代表
大きなサラブレッドも馬具なしで乗りこなす玉城代表

玉城代表が乗馬を始めたのは47歳の時。何かに打ち込もうというきっかけで始めてみると、その爽快感やスリル感、まるで空を飛んでいるかのような感覚に一気に魅了された。

「馬は、乗り手の心拍数や精神状態も感じ取るんですよ。なので、自分自身をコントロールして上手に馬の能力を引き出すために、自分で馬を飼った11年前からお酒を飲んでいません。お酒で失敗することもあったのですが、人生を立て直すことができたので、これからは馬に恩返しという気持ちです」と、オールフリー乗馬の普及を進めている。

牧場を手伝う久高正光さんは、世界硬式空手道連盟の理事長であり範士八段。空手を追求する中で馬と触れ合い出した。「空手に『騎馬立ち』という立ち方があるのですが、実際に馬に乗ったことがある人は少なく、形だけのものになっているんです。ここでは原点に戻る体験ができます」

記者が初めて馬に乗る

牧場からほど近い放牧場には、アオゾラルフィと奥さんのアオゾラシズカが2頭仲良く草を食べていた。「乗ってみますか?」と玉城代表。筆者の人生初乗馬が始まる。

乗馬の基本は大きく3つだという。①背筋を伸ばして重心をお尻に②目線は水平に③かかとを下げて内ももを締める―。なるほど。この3つさえ守ればひとまずどうにかなりそうだ。

アオゾラルフィに乗る久高さん。奥はアオゾラシズカに乗る筆者
アオゾラルフィに乗る久高さん。奥はアオゾラシズカに乗る筆者

筆者が乗ったのはシズカ。馬具がないので横からそのままジャンプして手をつき、体をぐっと持ち上げて背中に乗る。馬の背中は思ったよりも温かい。「体温は人間よりもだいたい1・5度ぐらいは高いですよ」と玉城代表が話すように、このポカポカ感が心まで温めてくれるようだ。肌や毛の質感は思ったよりもしっかりしていて、頼りがいがある。手綱などがない分、安定を保つために片手でたてがみをつかむのだが、嫌そうなそぶりはなさそうだ。

馬の一歩一歩は見た目以上に揺れるため、バランス感覚が大事なのだが、これも意外と慣れてきた。一度乗れるともうそこまで意識しないでよくなるようになるのは、自転車に初めて乗れた時に似ているかもしれない。目線が高くなって、ケンタウロスにでもなった気分だ。

足で軽くおなかをポンっと蹴ってやると前進する。蹴ってみたのはいいものの、ストップのさせ方を習う前にやってしまった。「止める時は『おーほー』と言いながら重心を後ろに向けたら止まりますよ」。筆者が「おーほー」を連発すると、シズカも止まってくれた。心が通い合ったなぁと、その楽しさや奥深さに触れられたような気がした。

古里の自然・文化を大切に

牧場で乗馬を楽しむメンバーは、定期的にビーチクリーンも行っている(玉城代表提供)
牧場で乗馬を楽しむメンバーは、定期的にビーチクリーンも行っている(玉城代表提供)

玉城代表自身は那覇で生まれたものの、母の故郷が牧場のある南城市玉城百名だ。子どものころに、当時百名区長だった叔父の座波健次郎さんによくこう言われていた。「大切な百名を、大人になっても美しい場所であるようにしていきなさいよ」。玉城代表はその気持ちを忘れずに、牧場の入り口に「美しい古里の自然・文化を大切に守ろう!」のメッセージを掲げている。

(長濱良起)

あおぞらニライカナイ牧場は2024年3月20日にリニューアルオープンを予定しており、同4月から1年間、年6回の「はだか馬ビーチ乗馬教室」の一期生を募集している。問い合わせ先は080-6490-4794(玉城代表)

(2023年12月14日付 週刊レキオ掲載)