県内演劇界の「今」を知る
5月11日から上演される劇団O.Z.E(オゼ)主催の舞台公演「九人脳」。脚本家、放送作家、お笑い芸人9人が脚本を担当し、県内で活動する役者32人で、所属劇団の垣根を越え出演する。どんな公演になりそうなのか、観客に向けたアピールポイントや、脚本家・演者の思いを教えてもらった。
今回の上演は、約20分の演劇全9作品。1公演で3作披露する予定表も発表された。
上演にあたって①出演者はくじ引きで決定②最初のせりふは「だからいったさ」③最後のせりふは「コーヒーでもどうぞ」という3つのルールあり。
脚本を担当した1人である大田享さんは、「この『九人脳』を見ると、県内演劇界の幅の広さが分かると思います。脚本家や役者の頑張りも伝わるはずですよ」と話す。
他チームの作品はほとんど見ていない大田さんだが、「最初と最後のせりふは共通ですが、ストレートに出す作品はあまりない気がします。他との違いを出し、観客に読まれないような遊びを入れてひねるでしょうね」とほほ笑みながら予想。普段は1人もしくはコンビで舞台に立つが、「芸人の時は自分にできることしかやっていない」と続ける。
「演劇は僕ができなくても脚本に入れると、役者メンバーが演じてくれる。表現が増えて楽しいです。今回はポテンシャルの高い4人が演じてくれるので本当にラッキー。お笑いでは絶対にない表現を1カ所だけ入れているので、どこか探してください」
垣根を越え楽しく稽古
大田さんが付けた作品名は「グソウ」。沖縄の言葉で「あの世」を指し、亡くなった人は生まれ変わったりせず死んだままがいいと思っているのではないか!?という空想から始まったファンタジーコメディーとのこと。役者4人は、どう演じるのか。
「ドキドキワクワクで稽古を楽しんでいます。9作とも作風が違い、役者の個性の化学反応で面白くなりますよ。1作見たら全作見たくなるはずです」(蔵元利貴さん)
「最近はミュージカル出演が多く、せりふでつなぐストレートプレイは久しぶり。テンポの良さを大事にする作品ですので、そこに注目してください」(花燈明佳さん)
「本番が楽しみで仕方ありません。能力が高い3人との共演なので、ついて行けるように頑張ります。僕がどんな役回りを演じるか見ていただきたいです」(上原一樹さん)
「稽古初日は台本がないまま進め役者の3人は震えていましたが、芸人の僕は平気。お笑い畑でいろんな経験をしていますから(笑)。ロン毛で飛び道具のようなキャラクターを演じるので、楽しみにしてください」(TOMOKIさん)
気軽に見てもらえる舞台を
「最後のせりふを『コーヒーでもどうぞ』にしましたが、最初のせりふみたいじゃないですか」と笑顔で語るのは総合演出の新垣晋也さん。この言葉での終演がどうなるのか楽しみだという。新垣さんは「ワクワクすること」を演劇人としてのテーマに掲げている。
「僕らがワクワクしたら、観客を引っ張れると思うんです。『九人脳』のせりふは最初と最後以外自由です。真面目な芝居、ミュージカル、どんな展開でも構いません。9本の内容がかぶることはないので、沖縄の脚本家さんの実力はすごいです」と熱を込める。10年前に4人の脚本家で「四人脳」という公演を行い好評で、今回はスケールアップを図ったという。また劇団O.Z.Eといえばショート作品50本を小劇場で上演し、3週間で観客1500人を動員した代表作「日付変更線」もある。「多くの方が『日付変更線』の復活を望んでいるので、一大ムーブメントを作ったと実感します。今回の『九人脳』も長く続けたい。演劇はプロアマ問わず楽しめて、誰でも参加できるジャンルだと僕は思うんです。敷居は高くないので、フラッと遊びに来る感覚で見ていただけたらうれしいです」
「ひーぷー」こと真栄平仁さん、けいたりんさん(プロパン7)らも脚本を書いた「九人脳」。演劇に詳しい人はもちろん、初心者でも楽しめそうな公演だ。
(饒波貴子)
劇団O.Z.E Little Box Vol.18『九人脳』
日程:5月11日(土)~18日(土)
全8公演/16日(木)は休演日
会場:アトリエ銘苅ベース(那覇市銘苅)
料金:1回 一般2500円 小中高生1500円 3回チケット7000円
※上演作品をSNSにて確認の上ご予約ください。
問い合わせ:TEL 098-866-6118 株式会社オリジンlil
※本番直前、脚本家トークショー『脳』を開催。4月30日(火)、19時から銘苅ベースにて。
料金1000円で、ドリンクは別料金にて販売
(2024年4月25日付 週刊レキオ掲載)