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沖縄の街路樹数は全国トップ 伸び放題の樹木や雑草対策はどうなっているの?<りゅうちゃんねる>


沖縄の街路樹数は全国トップ 伸び放題の樹木や雑草対策はどうなっているの?<りゅうちゃんねる> 県庁と那覇市役所の間にある那覇市所管の道路。入札が流れたため、除草作業ができていない=9月20日
この記事を書いた人 Avatar photo 玉城 文

 「県内のどこに行っても道路沿いの雑草が目立つ」。読者から電話で寄せられた声だ。読者は「沖縄は観光立県をうたっているのに、(那覇市の)県庁沿いの道は草が1メートルくらい伸びていた。行政はどんな対策をしているんだ」と疑問視した。本紙が取材すると県内各地の道路で伸び放題の雑草が目立っていた。穂先が車道に飛び出している場所や、雑草に遮られて車道から歩道が見えない場所もあった。管理者は市町村、県、沖縄総合事務局に分かれる。限られた予算の中でどうするか、管理者も四苦八苦しているようだ。

 県土木建築部道路管理課によると、1年間に沿道に関する問い合わせは全体で約4千件。雑草が伸びている、木の枝が邪魔だ、木の実が落ちて商売に支障が出る―といったさまざまな声が寄せられる。対応する県南部土木事務所の担当者は「1日の業務が、その応対でほぼ終わることもある」という。

 それもそのはず。国土交通省の研究機関「国土技術政策総合研究所」の統計では、沖縄は街路樹の本数が全国で最も多い。1キロメートル当たり33本で、2位の東京都の21本を引き離している。

 加えて成長の勢いも「桁違いにすごい」(県)。沖縄は全国で唯一の亜熱帯性気候のため、農林水産省によると、牧草生産量を例として成長の早さは全国平均の3倍にもなる。

 本数、成長の速度は全国に比べ、沖縄は突出しているといえる。夏場になると、刈った2週間後には30センチ伸びることもある沿道の雑草に、県は新たな取り組みを導入した。

40センチ伸びたら刈る

 県は年に2回除草を行う条件で刈り取り業務を発注していたが、2021年度から「40センチ程度伸びたら刈り取る」方式を導入した。刈り取り回数を増やすのに加え、県策定ガイドラインに沿って安全基準濃度の除草剤をかけたり、成長抑制のためお湯をかけたりと、業者のノウハウを生かすことで、県担当者は「一定程度の長さを維持できるようになった」と強調した。

 この新方式で県への「雑草に関する苦情は減ってきた」が、「高木についてはまだまだ多い」のが現状だという。記者が取材で南部土木事務所を訪れた10月も、沿道の高木に関しての問い合わせに応対していた。

 沿道管理は雑草、樹木などの緑化のほか、道路設備の老朽化対策や台風などの被害補修もあり、安全のため、それらが優先される。そのため県は「毎年予算が足りず、要望の4分の1は対応できない」と取材に答えた。

 懐事情は国道を管理する沖縄総合事務局も同じだ。道路維持管理の予算は年間およそ50億円で、県と同じく損傷したら影響が大きいものから補修される。「道路や橋、トンネルは費用が高い。塩害の修繕も多く、その費用もかさばる」と説明した。

 日々寄せられる雑草の苦情に対応するため、総合事務局も除草回数を増やす方式を年度内に数カ所で試験運用する予定だという。担当者は「コストがかさばらないかなど検証の上、導入を検討する」とした。

人も足りない

 読者からの電話で指摘があったのは、県庁庁舎と那覇市庁舎の間にある通りで、管理者は那覇市だ。市は23年度、市全体の除草作業のみで予算を2億4461万円計上して力を入れている。ところが、担当の市都市みらい部道路管理課によると、7月に予定していた除草事業の入札は不調となった。

 県造園建設業協会によると、県内の造園業界は人手不足にあることに加え、本島北部で進むテーマパーク事業ジャングリアに業者が流れているのが原因だという。この事業の規模は「海邦国体以来の大きさ」で、これまでにない忙しさに沸いている。「規模が大きすぎて、業者も適切な割り当て人数を把握していない面がある。そのため、業者は『できるだけ手厚く』と人員を集中的に充てている」状態だという。

 全体的な人員不足に加え、現場監督できる有資格者の確保もできないなどの状況もあり、入札が流れる事態が起きているという。

ボランティアに活路

 類を見ない量、成長の雑草に挑む沖縄の沿道景観対策。県、那覇市、国道を管理する沖縄総合事務局の3者が異口同音に求めていたのが、除草作業や美化景観に取り組むボランティアの協力だ。

 それぞれが通信アプリ「LINE」や交流サイト(SNS)などを使って、地域住民や企業・団体に対して、協力を呼び掛けている。

 3者はそれぞれ口をそろえるかのように「行政だけで沿道景観は維持できない」とした。

 人手不足は沖縄だけに限らず、全国的な課題。沿道景観を保つにも、県民一人一人のあり方が問われていそうだ。

(玉城文)

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