島野菜の魅力を発信 テトネーゼキッチン 主宰 手登根節子さん


島野菜の魅力を発信 テトネーゼキッチン 主宰 手登根節子さん うるま市の農水産品直売所「うるマルシェ」の野菜売り場で島野菜を手に持つ手登根節子さん。同所のキッチンスタジオで「簡単レシピの島野菜料理」の料理教室を毎月開催している。東京や沖縄での銀行勤務経験もある=うるま市前原の「うるマルシェ」 写真・村山望
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

島野菜に特化した野菜ソムリエとして

4月から始まった週刊レキオの新企画「テトネーゼキッチンの島野菜ごはん」で島野菜を使ったレシピを紹介している手登根節子(てとね・せつこ)さん。これまでに学んできた知識を生かし、島野菜を手軽に取り入れる方法を伝授している。実は料理の講師を始めて7年ほどだという手登根さん。沖縄の健康長寿県復活を取り戻したいと、島野菜の魅力を発信している。

島野菜をテーマにした料理教室や講座、レシピ監修など多方面で活躍中の手登根節子さん。料理の仕事に就いたのは約7年前、63歳の時だったという。転機は応募したパートの仕事に不採用になった時だ。義父母の介護を終えた後、「人と交わって何かをしたい」とパートに応募したものの、年齢の壁に突き当たった。

落ち込んでいた時、ラジオで耳にしたのが、野菜や果物の魅力を社会に伝える「野菜ソムリエ」の資格の紹介だった。もともとPTAやボランティアなどで食に関しての活動も経験していた手登根さん。「もしかしたら、私にもできるかもしれない」と、悔しさをバネに猛勉強を開始。2016年に初級に、その後1年もたたずに中級に合格した。

県内で活躍する野菜ソムリエたちと。左から3人目が手登根さん(提供)

悔しさ糧に資格取得

「学ぶことが楽しくなってしまって」とほほ笑む手登根さん。「野菜ソムリエプロ」「沖縄食材スペシャリスト」「ローフードマイスター1級」「楽ロビ島野菜マイスター認定講師」など、さまざまな資格を取得した。料理教室の他、島野菜に関する講演会、ホテルの朝食のレシピ監修など、仕事の依頼も相次いだ。

19年には、全国の野菜ソムリエの中から1年間の活動を審査する「野菜ソムリエアワード」で審査員特別賞を受賞。コロナ禍で対面の教室が難しくなると、苦手だったパソコンやスマホでオンライン講座の開催にも挑戦した。

島野菜などの料理教室を定期的に開催している(提供)
島野菜などの料理教室を定期的に開催している(提供)

「人生いつからでもスタートできる」という手登根さん。野菜ソムリエになってから忙しくも充実した日々を送る。子どもたちからは「生き生きして毎日楽しそう」と言われたという。

食材の効能について学ぶ中で「島野菜に特化した野菜ソムリエになろう」と決意した。改めて気付いたのは島野菜の力。「先人の知恵や食文化は理にかなっている」と実感した。子どもの頃、実家や近所ではあたいぐゎー(家庭菜園)で島野菜を育てていた。熱を出したときは母親がフーチバーを煎じて薬代わりに飲ませてくれた。今は「(島野菜を)どう料理したらいいか分からない」という人も多く、スーパーなどでの取り扱いも減っている。「絶やさないためにも知らない人たちに伝えていきたい」と意気込む。

食生活で健康長寿に

力を入れて取り組んでいることは、島野菜のおいしい食べ方と野菜を多く取るための重ね煮の提案。島野菜にはえぐみがあり、苦いという特徴がある。「これが病気や老化を予防する抗酸化物質の『ファイトケミカル』。生薬や民間薬の中に入っていることも多く、日常の食事がまさに医食同源なんです」と話す。重ね煮のうまみや発酵調味料の甘みなどを取り入れたレシピは幅広い年齢層に好評だ。「今まで野菜を口にしなかった子どもが食べるようになった」など、参加者からの反応がやりがいにつながっている。

教室で作った島野菜を使った料理。新しいレシピの開発も行っている(提供)

沖縄の伝統的な食文化を絶やさないためにも、島野菜を普及させたいという手登根さん。おいしく体に取り入れるためにどんな工夫ができるか知恵を絞る。願うのは沖縄の健康長寿県復活。「一度きりの人生。好きなことで、社会貢献もしつつ楽しみながら過ごしたい」と笑顔を見せた。

(坂本永通子)

テトネーゼキッチン

※講座などの最新情報はフェイスブックで発信

HP:https://tetoneze.com/
FB:https://www.facebook.com/profile.php?id=100015873138903

(2024年5月9日付 週刊レキオ掲載)