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設定価格「違法な“歩切り”の恐れ」 糸満、小学校改築事業で2度の入札不調 沖縄


設定価格「違法な“歩切り”の恐れ」 糸満、小学校改築事業で2度の入札不調 沖縄 糸満市役所(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【糸満】糸満市立高嶺小学校の移転改築事業が2度の入札不調によって遅れている問題で、市教育委員会による設計価格の設定について、市顧問弁護士が「実質的に(法が禁じる)『歩切り』に該当する恐れがある」との意見書を市教委に提出していたことが分かった。校舎建設の一部工事で、業者が出した見積額に市教委が61~80%の査定率をかけて低く設定していた。

 意見書を受けて、市教委は「歩切りとの認識はなかった」としつつ、「歩切りに該当すると受け止められても仕方のないやり方だった。重く受け止め、今後は適正な事務執行に努める」としている。
歩切りとは、市場などを反映した妥当な工事費を、予定価格の設定段階で一部控除し減額する行為。公共工事の品質確保の促進に関する法律で禁じられている。ダンピング受注の抑制や公共工事の品質確保を目的に、国交省は歩切り根絶を掲げる。

 査定率は工事発注者が設計価格を設定する際、見積額にかける係数。市場動向などを基に市教委が決める。2022年5月、市教委は校舎建設の鉄骨やエレベーターなどに関する工事の入札で、見積額に61%の査定率をかけて設計価格12億800万円(税抜き)を設定した。

 入札不調を受け、同年7月の2回目は工事を分割し、査定率80%をかけて設計価格11億9千万円(同)を算出したが、再び入札不調となった。

 資材高騰もあり、業者らは見積額との差額の大きさを指摘していた。

 査定率の根拠について、市教委は「当時の経緯を確認した結果、全体の事業予算枠に合わせてまとめようと、入札の該当工事以外の電気工事や水道工事の費用もひっくるめて勘案して(低い)査定率を出したと言わざるを得ない」と説明した。

 高嶺小の入札不調を巡っては、市議会が百条委員会を設置している。意見書は、歩切りに関する弁護士見解を百条委が求めたことを受け、4月9日に提出された。 

(岩切美穂)