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半世紀ぶりに収穫、多良間の在来種「ウルチアワ」 東京農大と地元農家がタッグ 沖縄


半世紀ぶりに収穫、多良間の在来種「ウルチアワ」 東京農大と地元農家がタッグ 沖縄 アワについて研究する東京農業大学国際食糧情報学部宮古亜熱帯農場職員の玉木陸斗さん(左)と約50年ぶりに収穫したアワを栽培した垣花光夫さん=9日、多良間村塩川
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【多良間】1975年ごろまで多良間村で栽培・収穫されていた多良間島在来種の「ウルチアワ」がこのほど、村塩川の垣花光夫さん(76)の畑に大きな穂を実らせた。10日、約50年ぶりにアワが収穫され、研究者や光夫さんの顔から笑みがこぼれた。

 村内では、光夫さんの父、彦さん=享年(92)=が1975年ごろまでアワを栽培していたが、彦さんが亡くなって以降、ウルチアワの生産が途絶えていた。

 国内外の雑穀研究者である大阪学院大学の竹井恵美子教授が大学院生時代、多良間島在来のアワに関心を持ち、生前の彦さんからアワの栽培方法などを聴き取っていた。

 ウルチアワの復活を目指し、竹井教授は東京農業大学国際食料情報学部の宮古亜熱帯農場職員、玉木陸斗さんと「アワとキビの復活栽培」の共同研究に着手。2019年、光夫さんが保管していたアワを玉木さんが栽培したところ、発芽したという。

 穂を収穫した玉木さんらは今回、光夫さんの協力を得て、アワを「里帰り」させて栽培。収穫前のアワを見た玉木さんは「実が茶色くなっているのが収穫の目安だ。一房30センチほどあり、昔に比べて土地が肥えているので30キロほど収穫できるのではないか」と期待を込めた。

 5月10日、旧暦4月3日に催されるアワの初穂祭り「アワプーリ」も開かれ、収穫したアワが普天間御嶽に奉納された。

 光夫さんは「アワご飯を炊いて仏壇の両親に供えたい」と語った。その上で「昔はスツウプナカの暁のニガイ(祈願)には、アワの神酒と芋の神酒を供えていた。来年度には間に合うように栽培してみたい」とほほ笑んだ。

 (清村めぐみ通信員)