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ハンセン病「正しく理解を」 宮古でパネル展 強制隔離、差別の歴史説明 沖縄


ハンセン病「正しく理解を」 宮古でパネル展 強制隔離、差別の歴史説明 沖縄 ハンセン病に関する正しい知識を普及する目的で13日から宮古島市役所などで始まったパネル展に見入る嘉数登副市長(手前)ら=13日、市役所
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【宮古島】県宮古福祉事務所は13~20日、宮古島市と共催で、ハンセン病に関する正しい知識を普及しようと、市役所や市立図書館でパネル展を開催した。会場には、誤った認識にもとづく国の隔離政策や入所者に強制した断種・堕胎の実態などを説明したパネルなどが展示された。県は毎年6月をハンセン病に関する正しい知識を普及する月間と定め、啓発活動に当たっている。

 展示会のパネルには、「らい予防法」(1907年制定)によって、医学的な根拠がないにもかかわらずハンセン病患者を強制隔離した過去が説明されている。らい予防法により、当事者やその家族はいわれのない差別や偏見に苦しめられた。

 13日、市役所でパネル展の開会セレモニーが開催され、関係者らが出席した。県宮古福祉事務所の宮城石所長は「パネル展により、若い世代を含めた市民が正しい知識を学び、自分ごととして考えるきっかけとなること、多様性を認め合う共生社会の実現に向けた一助となることを切に願っている」と語った。

 嘉数登副市長は「強制堕胎など、同じ過ちを繰り返さないことが大事だ。一番怖いことは、風化することだ」と話し、多くの市民がハンセン病に関する過ちを共有し、差別や偏見のない社会の実現に向けて考えることの重要性を強調した。

補償金の申請を呼びかけ 元患者家族が対象、2029年まで

【宮古島】ハンセン病に関する正しい知識の普及などを目的としたパネル展の一角に、ハンセン病の元患者家族を対象とする補償金の申請を呼びかけるポスターも展示された。ことし11月までだった申請期限は5年間延長された。しかし家族の中には、いわれのない差別や偏見を恐れ、補償金を申請に踏み切れない対象者も多い。

 元患者を家族に持つ60代女性は「申請手続きを進める中で、周囲が元患者の関係者であることを感づくかもしれない」と、偏見や差別を恐れる家族の苦しみを語った。女性は「『気付かれるぐらいなら、申請はしない』と思う人も少なくない」と話す。その上で「裁判で被害が認められたけど、偏見や差別はいまだにある。『私の家族は元患者だ』と言いたいけど、なかなか言えない。この思いを受け止めてくれる社会が実現してほしい」と切実な思いを吐露した。

 ハンセン病元患者家族に対する補償金は、今年11月が申請期限だったが、申請期限を5年間延長する改正家族補償法が成立。2029年11月までとなった。

 家族補償については、国の隔離政策による家族への被害を認めて賠償を命じた家族訴訟の熊本地裁判決(19年)を受け、国が補償を進めてきた。しかし、認定は国の想定の3割強にとどまっているという。