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人生が「自分のものになった」 成瀬さん、14年間がん闘病越え ミセスオブザイヤー日本大会へ 沖縄・那覇


人生が「自分のものになった」 成瀬さん、14年間がん闘病越え ミセスオブザイヤー日本大会へ 沖縄・那覇 ミセスオブザイヤー2024沖縄大会でスピーチする成瀬さん=那覇市の県男女共同参画センターてぃるる(提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 新垣 若菜

 美しさの多様性や自身の可能性を表現する「ミセスオブザイヤー2024沖縄大会」が開かれた7月7日、華やかな衣装に身を包む参加者の中に、成瀬絵里さん(40)=那覇市=の姿があった。24歳で若年性乳がんを発症し、14年間の闘病を経て38歳で完治した。「生きているだけで、それだけで美しい」。苦しかったこと、諦めなかったこと、朝を迎えられる喜びをかみしめながら舞台に立った。

 東京で働いていた最中、わきにできた青あざを不思議に思い、病院を受診すると、「乳がん」と判明。治療をしなければ余命わずか1~2カ月と告げられた。そこから長い闘病生活が始まった。治療を続けながら、結婚、出産も経験した。常に笑顔で居続け、周囲に決して弱音を吐くことはしなかった。

 3人の娘の子育てに奮闘しながら慌ただしい生活を送る中、たまたまSNSで、ある女性の姿が目にとまった。ミセスオブザイヤーに出場経験があると聞き、興味が湧いた。ただ「ミスコンはきれいな人のもので、自分は無理」と感じていたが、周囲に背中を押され参加を決めた。自身の経験を多くの人に伝えたいという思いもあった。

 参加者が集まった初日の自己紹介。これまでを振り返ろうと口を開いた途端、涙があふれ出た。「あぁ。常に誰かに気を遣って自分の気持ちを置いてけぼりにしてきたんだな。私自身が一番自分のことを分かっていなかった」。自分自身と徹底的に向き合う決意をした。

 これまで誰かのために生きていると感じていた人生が「急に自分のものになった」瞬間だった。ほかの参加者らとともに、大会本番に向けてレッスンを重ねた。大会本番で行う1分間スピーチの練習は、毎回涙があふれうまくいかなかった。「もう、振り返れば振り返るほど、私頑張ったんだなと泣けてきちゃって」

 迎えた当日。家族が見守る中、初めてスピーチを成功することができた。「朝日を浴びるのがこんなにうれしくて明日が来るのが奇跡で-」。思いをぶつけた。参加できただけで幸せだったなと考えていたら、特別賞に選ばれ、11月の日本大会に出場できることになった。

 「たくさんの人と人生の楽しさを分かち合ってこいと背中を押してもらえたようで、うれしさでいっぱい。また全力疾走します」。きらきらした笑顔の中に、力強さが光った。 

(新垣若菜)