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土俵入りの入場曲、景品に軽トラ… 楽しませる演出大好きな人<道しるべ・佐久川政秀さん闘牛と共に>中


土俵入りの入場曲、景品に軽トラ… 楽しませる演出大好きな人<道しるべ・佐久川政秀さん闘牛と共に>中 闘牛場内を1周する佐久川政秀さんのひつぎを見送る闘牛関係者ら =19日、うるま市石川多目的ドーム(ジャン松元撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 玉城 文

 「すごい人だな」。闘牛アナウンサーの伊波大志さん(40)は19日のうるま市の石川多目的ドームの光景を見て、あらためて感じたという。お盆明けの日に急きょ行われた佐久川政秀さんの出棺式。多くの人と牛が集まった。伊波さんも闘牛大会のように実況し、盛大に明るく、故人を送り出した。

 伊波さんが闘牛アナウンサーとして活躍の場を広げたのは、佐久川さんの一言が始まりだった。2010年、長年ラジオ番組で闘牛の話を伝えていたら、佐久川さんから「全島一優勝旗準全島闘牛大会の実況をしてみないか」と誘われた。「佐久川さんに誘われた喜びと、初めての不安」もあったが「やります」と承諾。全島一を防衛中の酋長若虎と実力牛・古堅モータース号の結びの一番など、その日は好カードの連続で、会場は大盛り上がり。「その時の興奮を今でも覚えている」と振り返る。2カ月後、闘牛組合連合会の専任アナウンサーとなり、現在まで4千超の試合を実況している。

佐久川政秀さんの思い出を語る伊波大志さん=19日、うるま市石川のFMうるま

 人を楽しませる演出を考えるのが大好きな人だった。今では定番となった土俵入り時に入場曲を使うのは、佐久川さんらが手がけた「昭和32年生還暦大闘牛大会」から定着したとされる。格闘技の試合で見られるような、エンタメ感を加えた。

 抽選会で軽トラックが景品で出るのも佐久川さんがきっかけだ。「普通はテレビが1 等になるところだが、闘牛では違う。おかげで他のイベントでは景品で驚かなくなったよ」と伊波さんは笑う。試合の途中でベリーダンスショーを行ったり、ソフトボール部のエースピッチャーだった娘さんの一球を打てるか挑戦させたりなど、誰も思いつかないことを次々とやっていった。RBCのテレビ番組「THE闘牛アワー」では「大会でレーザー光線を流してみたいね」と語るなど、アイデアはまだまだあった。

 出棺式での曲はゆずの「栄光の架橋(かけはし)」で送り出した。歌詞の「人知れず流した泪(なみだ)があった(中略)悔しくて眠れなかった夜があった」が「まさしくその通りなんだよ」と語っていたという。佐久川さんはカラオケでもこの曲をよく歌っていた。

 「闘牛を盛り上げたい。その思いが強かったし、新しいファンも増えた。やること全てがすごかったし、貢献度はすごい」。故人への思いは尽きない。

(玉城文)