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「こども誰でも通園制度」保育士や保護者が感じる効果と課題は 浦添、10月にも増園で調整 沖縄


「こども誰でも通園制度」保育士や保護者が感じる効果と課題は 浦添、10月にも増園で調整 沖縄 イメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 藤村 謙吾

 浦添市で県内最初となる「こども誰でも通園制度」の試行的事業(モデル事業)が7月1日に始まり、2カ月が過ぎた。同制度は、親の就労に関係なく子どもを保育園に預けられるのが特徴で、2026年度に全国で制度化される。同市以外に県内では、那覇市が8月から試行事業を行っている。7月から制度を試す浦添市西原のかすみ保育園と利用者が8月末、制度の課題や感触を語った。

 かすみ保育園では、同制度の開始に向けて職員を2人採用し、施設を増築した。担当保育士1人を中心に、一時預かり事業の担当者らと連携し、幼児をみる。制度の利用上限は10時間。同園は午前と午後に4時間ずつ利用時間を設け、それらと別に離乳食講座など「親子支援」のための2時間の枠を設定している。制度開始前には、心の不安を取り除くため、利用認定を受けた幼児の保護者と面談をした。

 利用回数が限られる分、同園が大切にするのは、送り迎えの会話だ。担当保育士の諸見里律子さん(52)は「保護者の話は、児童の状況を知るために必須。園での出来事も全て伝える。利用者は、子育てでとても疲れている。悩みがあればその場で聞く。園を楽しい場所だと思ってもらいたい」と話す。

 生後9カ月の双子を預ける母親(39)は、初めて利用した際、2人が心配で園での時間を一緒に過ごした。安心して預けられると感じ、2回目の利用のタイミングで、これまで断り続けていた休職中の職場からの仕事依頼を受けた。母親は「2人も周りの子に刺激を受けている。コップを使って飲む練習を、家でする余裕がなかったが、できるようになった。相談もしやすい。双子だと何をするにも時間がかかる。フリーの時間があることで、必要なことが一気に済ませられるようになった」と笑顔を見せる。

 同制度について、園側のやりがいや保護者の満足、利用児童の成長を歓迎する声が聞かれる一方、補助金の対象が幼児の利用時間に限定されることについての課題も浮かび上がった。利用が7月、8月共に、午睡を取る午後ではなく、午前中に集中。終日対応できるよう職員を配置した園にとっては、負担が生じる結果になった。他には、利用料をその場で現金で支払う点や、利用上限時間の短さを惜しむ声が聞かれた。

 諸見里さんは「お迎えの時、お母さんの表情が明るくなっている」と声を弾ませる。比嘉ひろえ園長は「保護者が元気になる、今後も必要な制度。子どもを第一に考えながら、工夫を重ねていきたい」と、言葉に熱を込めた。

 浦添市の試行的事業には、74世帯(79人)の応募があり、市は5月末時点で34世帯(39人)を認定した。利用時間の上限は月10時間で、7月は利用認定児童36人に対して利用児童数は27人214時間、8月は利用認定児童34人に対して利用児童数は24人212時間だった。浦添市は10月にも、試行的事業実施施設を新たに3園程度増やすよう調整を進めている。 

(藤村謙吾)