沖縄市は市制開始以降、市南西部の中心市街地周辺にミュージックタウン音市場や沖縄アリーナなどを設立し、市東部には人工島「潮乃森」の建設を進めるなど市の新たなランドマーク作りを進めている。一方、市北部地区には、ごみ処理施設があり、住民から忌避の意見も出ている公営火葬場の建設予定地にもなっている。住民からは「喜ばれる施設はよそ、喜ばれない施設はこっち」と不満の声が上がる。市は、北部地区の振興に向け検討を進めるが大規模な振興策の見通しは立っていない。
市北部地域には、米軍嘉手納弾薬庫や陸上自衛隊の射撃訓練場が置かれ、広大な土地を軍事施設に接収されている。倉敷ダムがあり、原野や耕作地も多く、市内の他地域に比べて自然が多く残っている。
その一地区、池原地域にごみ処理施設があり、同じ地域で火葬場の建設計画が進む。池原自治会の喜友名朝敬会長は「火葬場の説明会で市長は『北部地区の振興策を』と話していたが、まだ何も実施されていない。ないがしろにされている感覚がある」と心情を吐露。「自治会長になってから、この状況はおかしいと感じるようになったが、それ以前はこの状況が当たり前だと思っていた」と明かした。
嘉手納弾薬庫には、浦添市にある米軍牧港補給地区の倉庫群の一部が移設予定でもある。弾薬庫がある知花自治会の宇良敢会長は「区民は大きな不安を抱えている」と懸念を示す。中心市街地や市東部は住宅や商業施設が密集し、北部地区以外で大規模な土地を確保するのが難しくなっているが「なんでも受け入れるわけではない」と宇良会長は強調した。その上で「住民が懸念を抱える以上に、住みたいと思える地域にしてほしい」と市の北部地域振興策の進展を求めた。
北部地区は嘉手納飛行場の発着場所にも近く、市内でも騒音被害が大きい。池原自治会では、地域住民の約半数が嘉手納爆音訴訟の原告だという。地域からは「騒音被害が減る見込みはない」と諦めの声も上がる。
隣接する登川も騒音に苦しむ地域だ。登川自治会の屋宜宣芳会長は「登川では嘉手納飛行場の騒音が日常的に響いている。子どもが耳をふさぐ姿も見られる」と現状を訴える。「さまざまな不利益の対価を北部地区の振興にあててほしい」と話した。
沖縄市の桑江朝千夫市長はことし6月の市議会定例会で、池原地区に火葬場を建設することについて「必ずやらなければならないこと。地元に相当な負担をおかけすることは必至だ」と決意を示した。その上で、北部地区の振興策について「地域の要望を最優先事項として取り組み、地域要望の全てを受け入れる心づもりで協力を求めていきたい」と述べた。
市内で恩恵と負担の偏った状態が続いてきた。不均等な現状の一刻も早い解消が求められている。
(福田修平)