那覇市指定民俗文化財(無形)「那覇安里のフェーヌシマ」が10月27日、那覇市の安里八幡宮の例大祭で披露された。フェーヌシマは県内各地で踊られてきた歴史があるが、那覇市内では地域の青年らを中心に構成する安里南之島保存会(玉城正守会長)が地域の伝統芸能として大切に継承している。
棒、ひょうたん、猿
安里のフェーヌシマは、勇壮な「棒術」、日本本土の念仏踊りの影響が見られる「ヒュータン踊り(ひょうたん踊り)」、2人一組で後方倒立回転のように回る「サール・ゲーイ(猿返り)」の3演目で構成する。
玉城会長によると、約50年前は門外不出として演舞時は仕切りで隠していた時期もあったという。継承者の育成のためオープンになり、地域行事でも披露されている。
衣装は赤毛のかつら「赤ガンター」をかぶり、腰にひょうたんをぶら下げて帯には7色の布きれを垂らす。
安里八幡宮の前でドラが響くと青年らが2人一組となり、四尺棒(120センチ)で力強く棒術を披露した。
次は「ヒュータン踊り」。三線などの音楽はなく、ひょうたんを持ちながら歌う。「ひるやーみくーしーに さぎーらーりてぃ(昼は御腰に掲げられて)」と、聞いて分かる歌詞もあるが「ファニムニトゥチワ ナニムニトゥチワ」「アンチポ チーポ」など、謎の言葉も響く。
那覇市教育委員会の文化財調査報告によると、本土芸能が沖縄で普及する過程でウチナーグチに置き換えられたが、十分な翻訳がなされず「いつしかわけの分からぬ言葉が生まれ」て伝承された可能性があるという。
締めは2人一組の「サール・ゲーイ」。逆さになった演者をもう1人が抱きかかえてくるくる回る。休憩なしの踊りを締めくくる力業に、地域の住民が大きな拍手を送った。
次代に残したい
同保存会のメンバーは約20人だが、例大祭では仕事などの都合により6人で踊った。同会の青年代表、宮城賢さん(37)は「メンバーをさらに集めて、安里の芸能を子どもたちにも伝えていきたい」と語る。昨年から旗持ちとして参加している真和志中1年の玉木祥太さん(13)は「いずれは自分も踊りに参加したい」と笑顔を見せた。
(文=嘉陽拓也、写真=又吉康秀、嘉陽拓也)
那覇安里のフェーヌシマ 「フェーヌシマ」(南之島)踊りは県内各地に記録が残る。安里には読谷村長浜から伝わったとされるが詳細は不明。「棒術」「ヒュータン踊り」「サール・ゲーイ」の3演目で受け継がれている。安里八幡宮で披露されるが同宮の縁起とは関係なく、地域の民俗芸能として奉納されている。
若者の育成進める
玉城正守・安里南之島保存会会長 フェーヌシマは安里を代表する伝統芸能であり、私も18歳から参加してきた。再建が進む首里城との関係で言えば、1992年に首里城の復元を祝うイベントでも披露した。これからは受け継ぐ若者の人材育成が大事。演者が多ければ多いほど迫力が増していくので、他地域の人で参加したい人がいれば積極的に教えていきたい。