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重量挙げとバーガー店経営、二足のわらじ “怪物”ひしめく階級に挑む 重量挙げ・男子109キロ超級 知念光亮<沖縄からパリへ 五輪選考大詰め>2


重量挙げとバーガー店経営、二足のわらじ “怪物”ひしめく階級に挑む 重量挙げ・男子109キロ超級 知念光亮<沖縄からパリへ 五輪選考大詰め>2 220キロのバーベルでスクワットする知念光亮=1日、恩納村のウェイトリフティングアカデミー沖縄
この記事を書いた人 Avatar photo 古川 峻

 地元・沖縄で力を付けてきた重量挙げ男子109キロ超級の知念光亮(豊見城高―沖縄国際大出、BIG KAMY)が11日、パリ五輪出場を懸けたラストチャンスに挑む。本部高の比嘉敏彦監督に指導を仰ぐなど、選考レース最後のワールドカップへ向け、準備を積んできた。この1年の大会はけがの影響で納得できる結果が出せていない。出場権を獲得できる五輪ランキング10位以上を目指す。「体が壊れてもやるしかない」。温和な表情から、決死の覚悟をのぞかせる。

 豊見城高で重量挙げを始め、同階級のライバル村上英士朗(いちご)と日本高校記録を更新し合った。進学先は多くの選手と異なり県内を選択した。部活を立ち上げ、五輪を目指して同級生らと切磋琢磨(せっさたくま)し、「信頼できる人と楽しみながら伸び伸びと頑張れた」と振り返る。

知念 光亮

 卒業後はいちご(東京)に入社し村上と高め合うも、沖縄に戻って練習することが多かった。優勝はライバルに譲ったが、22年の国体でスナッチの日本記録を更新した。「沖縄で記録が伸びていた」。退社を決意し、23年春に那覇市でハンバーガー屋「BIG KAMY」をオープンした。アスリートと経営者の二足のわらじを履く。

 「自分の体は自分が一番よく分かる」と長年、独学でメニューを組み立ててきた。解剖学などの知識を精力的に吸収し、実践に移す。弱点だった下半身のパワー不足を改善したが、昨年5月にアジア選手権で左肩を負傷した。筋力が付いたことで、かえって力に頼るフォームに変わっていたことがけがの原因だった。

 ネガティブに捉えてはいない。「肩の構造の勉強になったし、フォームを変える機会になった」。冬季から日本代表コーチの比嘉敏彦監督に指導を仰ぎ、1センチ単位で理にかなった動きを追求する。足元から最短距離で頭上や胸元にバーベルを引き上げるため、シャフトと体の軸を一体化させるようなイメージに意識を集中させる。接客中や日常生活でも体の背面を意識するなど、理想とするフォームを体得するため工夫をこらす。比嘉監督は「指導者の視点も理解し、すぐに感覚をつかんだ」と舌を巻く。

 今では肩の痛みも取れ、高重量を扱う練習ができている。「期間内に間に合わせることができた」と充実感をにじませる。選考レースは五輪ランク10位の村上に後れを取るが、見据えるのはその先だ。

 世界の怪物がひしめく重量級で、沖縄から五輪に出る―。自己ベストは421キロ。426キロ以上を出せば五輪の切符に手が届く。「沖縄で周囲のサポートを受け、応援の声を聞きながら世界を目指して頑張ってきた」。パリ五輪を目指し、己を超えていく。

 (古川峻)


 ちねん・こうすけ  1996年1月6日生まれ。八重瀬町出身。東風平中―豊見城高―沖縄国際大出。那覇市でハンバーガー屋「BIG KAMY」を経営する。22年の国体でスナッチ195キロを出し日本記録を更新した。


 パリ五輪の日本代表を決める選考レースが熱を帯びている。重量挙げはワールドカップが開催されており、終了後の五輪ランキング10位以上が代表に確定する。カヌー・スプリントは18日開幕のアジア選手権で2位以上、レスリングは19日に始まるアジア予選の2位以上が五輪への出場権を獲得する。各競技で選考が大詰めを迎える中、県勢アスリートの取り組みを紹介する。