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成長実感、悲願8強へ 連係の柱、日本の守護神 水球GK・棚村克行<沖縄からパリへ>12


成長実感、悲願8強へ 連係の柱、日本の守護神 水球GK・棚村克行<沖縄からパリへ>12 高校生と共に練習をする棚村克行(奥)=那覇商業高校室内プール(喜瀬守昭撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 古川 峻

 昨年の杭州アジア大会で53年ぶりに優勝し、3大会連続の五輪出場を決めた水球男子。11―7で勝利した中国との決勝をGK棚村克行は「ダブルスコアでもいい内容だった」と振り返る。アジアで群を抜いた存在にまで成長した日本の守護神として、リオデジャネイロと東京の両五輪で果たせなかった初の決勝トーナメント進出を狙う。

 大学卒業後の2012年から岐阜県スポーツ協会に所属した。当時は高校生に指導した後に午後7~9時まで1人で練習するような状況だった。だがリオ五輪出場を境に状況が変わった。ブルボンKZに所属が移った棚村を含め、多くの日本代表選手が競技に専念できる環境となった。

 東京五輪は予選リーグで敗退したが、84年ロサンゼルス五輪以来の勝利を飾り、銀メダルのギリシャには1点差と肉薄した。さらに力を付けて今年2月の世界水泳ではカザフスタンに17―4で大勝。「日本のレベルが上がってきているのを示す点差を残すことはできた」と力を込めた。

棚村 克行

 各選手が実力を磨く中、棚村は昨季、オーストラリアリーグに初挑戦した。プロリーグがない日本と異なり、毎週の試合で1点を争うひりひりとした展開を味わった。水球はサッカーなどと比べてコートが狭いため、GKはボール回しなど求められる役割が多く、勝敗に与える影響は大きい。「7人目のフィールダーのつもり」で相手フローターへのパスを奪い、チームのリーグ制覇に貢献した。

 水中の格闘技とも言われるが、体格で劣る日本人はスピードや連係を生かしたカウンターで勝負する。東京五輪で戦術の柱だった、相手に圧をかけてパスをカットする「パスラインディフェンス」だけでなく、今では戦術面にも幅が生まれている。棚村は声をからすほど後方から指示を出しており、連係面で決定的な役割を担う。「勝つために外国人より複雑な動きをしないといけない」と語る。

 「世界一になるチームはメンバー全員が世界一。個々の能力を高めることが必要になる」。棚村もさらなるステップアップのため、今後は最高峰のヨーロッパリーグ参戦を目指している。

 パリ五輪は28日から6カ国で予選リーグを行い、各グループ上位4チームが決勝トーナメントに進む。「出ることが目標ではない。なんとしても決勝リーグに行く」。立派なあごひげから見せる柔和な表情に自信をかいま見せた。

 (古川峻)


 たなむら・かつゆき 1989年8月3日生まれ。母が石垣市出身で、石垣市で生まれた。明大中野中―同高―筑波大出、ブルボンKZ所属。16年リオ、20年東京の五輪代表。