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沖縄初のサッカー五輪代表、野澤大志ブランドン 森保監督も伸びしろに期待「ギラギラ見せて」<沖縄からパリへ>13


沖縄初のサッカー五輪代表、野澤大志ブランドン 森保監督も伸びしろに期待「ギラギラ見せて」<沖縄からパリへ>13 U―23日本代表選手に選出された野澤大志ブランドン(右から3人目)=3日、都内
この記事を書いた人 Avatar photo 古川 峻

 パリ五輪の切符をつかんだ4、5月のU―23アジア・カップ。1試合に出場したGK野澤大志ブランドンは優勝を喜びつつも「苦い思い出もある」と語った。出場した予選リーグの韓国戦は落ち着いてゴールを守り続けたが、一瞬の判断で勝敗が分かれた。コーナーキックでボールに向かったが頭上を越え、得点を許し0―1で敗れた。

 五輪代表に決まった7月3日。野澤は精悍(せいかん)な顔つきで記者の質問に答えていた。「アジア・カップの時の自分なら同じようになるが、その時とは違う自分になっている」。これまでも苦労を糧に成長を続けてきた。

 宜野湾中を卒業し、FC琉球U―15からFC東京U―18に移った。まもなくトップチームの練習に加わり、2020年に昇格しプロ入りを果たす。21年1月にルヴァン杯優勝を経験するなど順調にキャリアを重ねた。一方で元日本代表GKの林彰洋らとの熾烈(しれつ)な競争にもまれ、J1出場の機会はなかった。

アジア・カップでプレーする野澤大志ブランドン=4月22日、ドーハ
野澤大志ブランドン

 21年の沖縄キャンプは黙々と練習に集中し、「絶対試合に出たい」と意欲あふれる姿を見せていた。同年のシーズン途中にJ3盛岡に移籍し、出場を重ねてJ2昇格に貢献。翌年は22試合に出場したが降格を味わった。「ほとんどが苦しい時間だったと思うが、人としてかなり成長したと思う」と振り返る。

 23年にFC東京に戻り、シーズン後半から元ポーランド代表の正GKに代わり10試合に出場。レギュラーを勝ち取った。伸びしろを期待されて同年12月に県出身3人目のA代表に選ばれた。森保一監督は「経験ではなく、自分が試合に出るんだというギラギラしたものを練習から見せてもらえれば」と会見で話した。

 同世代でもA代表GK鈴木彩艶やU―23正GK小久保玲央ブライアンとの競争がある。その中で2人の五輪GK枠をつかんだ。代表を決め「今は一番、サッカーをしていて楽しい。失敗することもあるけど、キーパーをしていてすごく楽しい」と心境を語った。

 今でも印象に残る試合がある。2012年のロンドン五輪でGK権田修一らの活躍で金星を挙げたスペイン戦だ。「すげーと思いながら(五輪は)全く遠い存在だった。チームの勢いがすごかった」と懐かしむ。それから12年。目標は金メダルになった。「相手が想像しているよりはるかに上のクオリティーと勢いを出していきたい」。沖縄初のサッカー五輪代表として県民に夢を見せるつもりだ。

 (古川峻)
 (おわり)


 のざわ・たいし・ぶらんどん 2002年12月25日生まれ。宜野湾市出身。宜野湾中―第一学院高出。FC琉球U―15、FC東京U―18を経て、2020年にFC東京のトップチームに加入した。23年に日本代表に初選出された。