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「王者」に連覇の重圧、もがき苦しむ 「どこより長いシーズン」 CS決勝で力尽き<キングス準優勝 激闘の軌跡>1


「王者」に連覇の重圧、もがき苦しむ 「どこより長いシーズン」 CS決勝で力尽き<キングス準優勝 激闘の軌跡>1 キングス―広島 第2Q、ディフェンスを突破し、シュートを決めるキングスの岸本隆一=5月28日、神奈川県の横浜アリーナ(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 屋嘉部 長将

 プロバスケットボールBリーグの2023―24シーズンチャンピオンシップ(CS)決勝。歴代2チーム目の連覇を目指した琉球ゴールデンキングスは、第3戦までもつれる激闘の末、初優勝を目指す広島ドラゴンフライズに敗れた。第3戦の最終盤、追い上げたいキングスのシュートはことごとくリングにはじかれ、逆転できないまま試合終了のブザーを聞いた。最後までもがき苦しんだシーズンを象徴するような幕切れだった。

 5月28日の第3戦の試合前、キングスの選手の表情にはどこか硬さがあった。試合の最初の攻撃で、今村佳太がジャック・クーリーに出したパスが合わないなど何かが変だった。広島のスイッチディフェンスを前にキングスは突破口を見いだせず、ボールを動かせずドライブコースもつくれなかった。インサイドアタックが少なく、3点弾も岸本隆一や松脇圭志のディープスリーなどタフショットが多く、3点弾成功率は16・7%と伸びなかった。

 インサイドではクーリーやアレックス・カークに広島が激しく体を当て、複数人で抑え込むなどし、リバウンドで優位に立てなかった。

 ハーフタイムで控室に引き上げる際も、広島の選手がお互いに声をかける中、キングスの選手は言葉数が少なかった。初めての頂点を目指し勢いに乗る広島とは対照的に、キングスに「連覇」という重圧がのしかかっているようだった。

 6点をリードされて始まった後半。キングスはオフェンスファウルやパスミスなど自ら攻撃機会を失った。その間にも広島は、CSで当たっている山崎稜が3点弾を決め、どんどん盛り上がっていった。追いかける展開でキングスは主要メンバーを変えられず、選手のタイムシェアができなかった。最終的に出場時間が30分以上となった今村と岸本が、守備でスイッチミスをして失点をするなど、要所で疲れが見えた。岸本はファウルアウトになり、最後までコートに立てなかった。

 試合後、広島のカイル・ミリングHCは「琉球の強みはリバウンドと3点弾だと思っていた。3点弾を止めるプランで、特に今村選手と岸本選手は意地でも止めに行った。3点弾を打たせてもタフで打たせる。リバウンドはガード陣も取ってくれたのが大きかった」とキングス対策がはまったことを明かした。

 キングスの桶谷大HCは「スイッチディフェンスに対して、僕が選手に糸口、プレーを提案できなかった」と敗因を振り返った。今季は先出し開幕から始まり、レギュラーシーズン、東アジアスーパーリーグ、天皇杯、そしてCSと計77試合と一番長く戦ってきたキングス。岸本は「どこよりも長くシーズンを戦ってきて、今日一日で全て終わった。その喪失感が大きい」。

 けが人が続出し、過密日程で目指すべきバスケをなかなか形にできなかった。天皇杯では歴史的惨敗を喫し、シーズン終盤で連敗して地区連覇を逃した。険しい道のりを歩み、CSでは激戦区を勝ち上がり決勝の舞台までたどり着いた。それでも頂点には手が届かず、試合後の選手の表情には悔しさが強くにじんだ。

 (屋嘉部長将)


 2022―23シーズンに初のBリーグ王者となったキングス。連覇を懸けて戦った23―24シーズンの激闘を振り返る。(随時掲載)