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開幕前後にけが人続出 天皇杯大敗で大きな影<キングス準優勝 激闘の軌跡>2


開幕前後にけが人続出 天皇杯大敗で大きな影<キングス準優勝 激闘の軌跡>2 天皇杯決勝でアレックス・カーク(左から2人目)とアレン・ダーラム(同左端)、ヴィック・ロー(同3人目)を起用し、スリービッグを使うキングス=3月16日、さいたまスーパーアリーナ(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 屋嘉部 長将

 2022―23シーズンに悲願のBリーグ初優勝を果たした琉球ゴールデンキングス。23―24シーズンは優勝を経験した多くの選手が残り、宿敵・千葉ジェッツからオールラウンダーのヴィック・ローを獲得した。昨季の優勝の原動力となった「ポジションレス」にローを加え、攻撃の選択肢を増やしていくことを目指した。連覇に向け、いいスタートを切れるかと思われたが、開幕前にいきなりつまずいた。

 インサイドの大黒柱であるジャック・クーリーが膝蓋靭帯(じんたい)炎で故障者リスト入りし、開幕に間に合わない。急きょ、アルバルク東京で2連覇の経験のあるアレックス・カークを獲得した。しかし、その後もローやカークが故障者リスト入り。

 レギュラーシーズン(RS)のアウェー戦では飛行機移動が必須で、さらに国をまたぐ移動のある東アジアスーパーリーグ(EASL)や天皇杯もあり、なかなか休息が取れず、練習に十分な時間を割けなかった。ほかの選手もコンディション不良などで欠場し、最終的にレギュラーシーズン60試合前出場できたのは岸本隆一だけだった。過密日程や負傷者が続出したことなどで選手全員がそろうことがほとんどなく、桶谷大HCの戦術がなかなか浸透しなかった。

 それでも、ことし1月にカークが日本国籍を取得し、カークに加え外国籍選手2人の「スリービッグ」が使えるようになった。3月には一試合平均90点超えの三遠ネオフェニックスに得点力で真っ向勝負し、今季初の100点ゲームを達成。その後も高い得点力で勝利を重ね、初の天皇杯優勝を懸けて千葉ジェッツと対戦した。

 しかし、千葉Jはカークやジャック・クーリーなど重量級の選手をそろえるキングスに対し、スピードのミスマッチを生かす戦術をとる。攻守で優位に立たれ、さらに岸本隆一や今村佳太らハンドラーがスクリーンを使ってドリブルをした時に、ダブルチームでプレッシャーをかける「ブリッツ」を仕掛けられて思うように攻撃を組み立てられず、ミスが続いた。

 69―117。終わってみれば、bjリーグ時代を含めたキングスの公式戦過去最多失点という歴史的大敗だった。

 「皆さんの信頼は(天皇杯の)あの1試合でなくしたと思っている」。天皇杯直後のRSで勝った後、桶谷HCは観客の前で話すほど、天皇杯の1敗は大きな影を落とした。

 だが、キングスは引きずらなかった。岸本が「他のチームに比べて戦い方がいっぱいあったのが強さだった。相手に合わせることもできたし、こっちからアドバンテージを取りに行くことができた」と言うように、荒川颯、松脇圭志、牧隼利の1997年組のセカンドユニットやローの活躍などさまざまな武器を手に勝利を重ねていく。

 ただ上位チームには負け越すことは少なかった強みを見せるが、中位や下位のチームに点差をつけられて敗れることもあり、不安定さを感じさせた。

 勝ち負けを繰り返していく中、クーリーらがけがから復帰。チームの戦術理解も深まり始めた中、RS終盤にキングスは再び、苦境に立たされることになった。

 (屋嘉部長将)


 2022―23シーズンに初のBリーグ王者となったキングス。連覇を懸けて戦った23―24シーズンの激闘を振り返る。(随時掲載)