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【記者解説】司法は真正面の判断を 辺野古代執行訴訟 沖縄県が国に反論の答弁書


【記者解説】司法は真正面の判断を 辺野古代執行訴訟 沖縄県が国に反論の答弁書 福岡高裁那覇支部(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 沖田 有吾

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設計画を巡り、国から代執行訴訟を提起された県は、福岡高裁那覇支部に答弁書を提出して国と全面的に争う姿勢を示した。答弁書では新基地建設に反対する玉城デニー知事を当選させた県民の「民意」を前面に押し出し、複数の理由を挙げながら、国の請求を棄却するよう求めている。

 名護市辺野古の新基地建設を巡る代執行訴訟で、県は国に反論する答弁書を提出した。県は国の提訴は代執行の要件全てを満たしていないと主張し、特に新基地建設反対の民意を大きな柱の一つに据え、国の主張する「公益」に反論する。

 代執行手続きには(1)知事の法定受託事務の管理・執行が法令の規定や各大臣の処分に違反する、あるいは管理・執行を怠る場合(2)代執行手続き以外の方法で是正を図ることが困難(3)放置することで著しく公益を害することが明らか―という3つの要件を満たす必要がある。

 県は(1)について、設計変更申請を承認すべきという要件の充足性について国は主張を欠いていて失当だと指摘。(2)についてはこれまで県が繰り返し政府や国会に対話を求めて来たにもかかわらず全て無視したことから、あらゆる方法を検討したとは言えないと反論している。
 (3)の公益について、県は、元々は5年で終わるはずだった埋め立て工事が長期化し、設計変更が仮に承認されても完成までは最短で12年間を要し、その間は普天間を固定化することなどから、国の主張する公益侵害を「極めて抽象的なもの」と断じた。

 県は、琉球処分に始まり沖縄戦や戦後の基地集中過程と事件事故や爆音、環境汚染など現在に至るまでの基地被害を挙げ、これまで基地被害を真摯に解決しようとしてこなかった政府が、過重な負担を押し付けられてきた沖縄に対して、普天間の危険性除去と辺野古の二者択一を迫ることを改めて疑問視する。

 「何が地域住民にとっての公益であるかの判断を、裁判所を含めて、国が沖縄県に押し付けることが許されるのか」という一文は、自分たちの未来を自分たちで決めることが許されてこなかった沖縄の歴史を踏まえた上で、なお同じことを繰り返すことが「公益」に値するのかを問うている。

 裁判所は、歴史に残る判決になることを強く意識した上で、争点に対して真正面から判断を示すことが求められる。

 (沖田有吾)

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