政府は、台湾有事に備えて2024年度に策定を目指す沖縄県・先島諸島住民の九州各県への避難計画を巡り、一部を23年度中に先行して策定する方針を固めた。熊本県八代市で受け入れるとの内容。前倒し作業によって課題を洗い出し、対象住民が約12万人に及ぶ全体の避難計画作りを円滑に進める狙い。複数の政府関係者が9日、明らかにした。
国民保護法で定められた避難計画を巡り、受け入れ側自治体を具体的に定めるのは初めてとなる。避難施設、食料や医療の確保など検討すべき点は多岐にわたり、実効性のある計画となるかどうかが課題となる。
関係者によると、八代市は鹿児島の屋久島町からの避難民受け入れ計画をまとめた実績があり、モデルケースとしてふさわしいと判断した。熊本県の担当者は「八代市では屋久島からの避難受け入れの図上訓練も予定しており、こうした実績を生かしたい」と話した。避難元の自治体は沖縄の与那国町、多良間村のいずれかを想定している。
計画では、集落など地域のコミュニティーに配慮しながら、どの公共施設で受け入れ可能かを選定。住民や観光客ら避難者が市内に到着してから、どのような交通手段で施設へ輸送するかも決める。必要となる食料の備蓄量や医療体制に加え、避難が長期化した場合の学校教育や就職先についても検討する。
政府は、10月から避難先と想定する九州各県と山口県に順次受け入れを要請。松野博一官房長官も熊本、鹿児島両県を訪問して直接協力を求めた。来年1月には九州各県と沖縄県合同の図上訓練を初実施する予定。
昨年12月に決定した国家安全保障戦略は、南西諸島住民の円滑な避難計画の速やかな策定や輸送手段の確保、避難施設を整備すると明記している。
(共同通信)