第51回琉球新報短編小説賞の最終選考会がこのほど那覇市の琉球新報社で開かれ、上地庸(よう)子さん(35)=宜野座村出身、奈良県在住=の「寄居虫(やどかり)」が正賞に決まった。佳作は上田真弓さん(54)=西原町=の「硝子の舟」に決まった。今回は37作品の応募があった。
応募作37編を予備選考で6編に絞り、芥川賞作家の又吉栄喜氏と元琉球大教授で作家の大城貞俊氏による最終選考を実施した。受賞作の「寄居虫(やどかり)」について、又吉氏は「人間の根源的なことを記した希有(けう)な小説」、大城氏は「人間の寂しさ、悲しさを周到に表現した傑作」と評価した。
「寄居虫」は赤子を失った主人公の女性がある晩、寝室にやって来たヤドカリをきっかけに、生きている実感を取り戻していくという物語。
又吉氏は「ドラマが生まれそうな予感が読者を離さない。発想が面白く、不気味で、人間味がある。衝撃的な結末が余韻を残す」と評し「人間の根源的なことを記した希有な小説だ」と述べた。
大城氏は「人間の寂しさ、悲しさを周到に表現した傑作だ。主人公、私の悲しみがヤドカリや風景描写にメタファーとして投影されている。文学的な資質や表現に優れた作品だ」と激賞した。
贈呈式は2月14日午後6時半から琉球新報ホールで開催する。山之口貘賞、遠藤石村賞・琉球俳壇賞、琉球歌壇賞、琉球新報児童文学賞と合同となる。
(伊佐尚記)
(2月6日付で作品と選考評を掲載)