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朴葵姫ギターリサイタル「BACH」に寄せて 「シャコンヌ」の悲しさと励まし 海瀬頭豊(シンガー・ソングライター)


朴葵姫ギターリサイタル「BACH」に寄せて 「シャコンヌ」の悲しさと励まし 海瀬頭豊(シンガー・ソングライター) 朴葵姫(日本コロムビア提供)
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 琉球新報ホールで朴葵姫(パク・キュヒ)のギターリサイタルがあるという。久しぶりに忘れていた青春を思い出し胸が弾む。彼女の音楽は、過去の巨匠たちに比べても極めて完成度が高い。ギターの難易度を感じさせないテクニックを生で聴くチャンスに恵まれることに感謝である。

 戦後日本にギターブームが起きたのは60年前。ラジオからセゴビアの弾く「アルハンブラの思い出」や、イエペスの「禁じられた遊び」が流れ、それに魅了されギターを手にした。タルレガやその他の作品を猛練習し、また琉大ギタークラブを琉大ギターアンサンブルにして、米軍施政下で苦しむ沖縄で演奏活動をしていた。そんな中でクラシックギターリサイタルをするようになったが、その私を励ましたのは「フーガ」や「シャコンヌ」のバッハ作品であった。特に「シャコンヌ」から浮かぶ雄大な景色には感動した。

 やがて、祖国復帰へと向かう激動の時代となり、コザ暴動を経て復帰したものの、日米軍事同盟の支配下で、さらなる苦難を押し付けられることになった。そして起きたのが喜瀬武原闘争であった。米海兵隊の155ミリりゅう弾砲実弾射撃訓練で傷つく恩納岳連山の姿を見て浮かんだのは、やはり「シャコンヌ」の悲しいニ短調と、後半のニ長調の励ましであった。

 今回、朴葵姫さんは、その「シャコンヌ」をはじめ、バッハの作品を中心に演奏するという。きっと相対的平和主義で戦争を正当化してやまない世界の軍事暴力の愚かさを、目覚めさせてくれるに違いない。そして、もう一つ、一度も弾かずにいたバリオスの難曲「大聖堂」を心ゆくまで楽しみたい。

 朴葵姫(パク・キュヒ)ギターリサイタル「BACH(バッハ)」(琉球新報社主催)が6月11日午後7時、那覇市の琉球新報ホールで開かれる。入場料は前売り4千円(当日千円増し)。全席指定、未就学児の入場不可。デパートリウボウ、島ピアノセンター、イープラス、琉球新報中部支社・北部支社で販売。問い合わせは琉球新報社統合広告事業局、電話098(865)5255(平日午前10時~午後5時)。