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沖縄の若者が「世界一貧しい大統領」と対談!地球の反対側で知った人生で大切にしたいこと 比嘉麻里萌さん(続き)


この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

  >>>(前編)思い立ったら行動へ からの続き

 人生を変えた40分間

 ムヒカ氏が自宅で農作業をしていると聞いて向かうと、招き入れてくれた。兼ねてから考えていた質問は「戦う愛と受け入れる愛」について。

 「本を読みインタビュー動画も観ました。ムヒカ氏は反政府ゲリラとして国と戦い投獄された経験もある。なのに、大統領になって国を動かす側に回ったのはなぜなのか聞きたかった」

 緊張しながら本人にぶつけた。ムヒカ氏は丁寧に言葉を尽くして話してくれた。

 「誰1人として同じ人間はいない。皆違った考えや意見を持っている。だからみんなと協力して生きていくには受け入れる愛を持たなければならない」と語る一方、戦う愛については「人間は永遠に生きることはできないが、次の世代へと命は繋がっていく。血縁関係だけではなく、人はさまざまな形で互いに繋がってる。だからこそ、私たちはより良い未来を残すべきだ。現状のままでは未来に適していないと感じたら、状況を改善するために行動を起こす必要がある。今生きている人々だけが、『戦う愛』で現在を変えることができる」。

 対談は録音し、後日聞き返して語学学校の先生の力も借りながら翻訳した。比嘉さんは当時の様子をインスタグラムに投稿し、ムヒカ氏とのツーショット写真とともに「夢を叶える秘訣は、行動力と運!そして運は行動力次第!!」と興奮気味に書き込んだ。

インスタグラムに投稿したウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏と対談した時の写真=2017年9月(比嘉さんのインスタグラムより)

 40分間の対談でムヒカ氏が語った言葉は、今も比嘉さんの原動力だ。

 「ビジョンを持って仕事をすること。自分がやる仕事に愛を持っているかどうかだ、と自分なりに解釈しました。夢物語じゃなくて、自分が一歩踏み出せば、自分の周りは変えられる。自分が見てる世界も変えられるのではないか。世界はそんなに簡単には変わらないけど、自分の見る視点が変われば見る世界も変わると思う」

 グローバルからローカルへ

 世界に目を向けるものの、活動の拠点は沖縄。沖縄ハブのメンバーも海外経験が豊富な人や、起業家から医者まで、さまざまな人がいるが、共通しているのは「沖縄のために何かをしたい」と言うこだわりがあることだ。

 「世界は広いけど、グローバルって結局ローカルの集団でしかないんだなって思うようになった。世界で活躍するグローバル人材になりたいって思っていたが、外に出れば出るほど、自分が沖縄の話をしてるのに気がついた。より良い未来を残すために自分が何ができるんだろうって考えたら、地域を良くしていくことになるんだなと感じている」

 世界各地に支部を持つグローバルシェイパーズに、昨年インド・カシミール地方にも支部ができた。比嘉さんの現地の友人が創設に関わったという。インドとパキスタンに分離支配されイスラム教とヒンドゥー教の対立などによる情勢不安定な地域だ。「友人は、住民が政府に声を上げられる状況ではない中、国際団体の一支部として世界に向けて声を上げられることに希望を抱いていた」

ネパールカトマンズで開かれたコロナ明けて初のGlobal Shapers Communiyの会合にて。インド、香港、スリランカの仲間達と共に歓迎の印として赤いリボンをかけてもらい、印を顔につけてもらった比嘉さん(写真左)=2023年5月21日(比嘉さん提供)

 来る4月に韓国や中国、台湾やモンゴルなどアジア各国のハブから若者数十人が沖縄に集う。大きなイベントを控え、比嘉さんはその準備に追われている。それぞれの国で社会課題の解決に向けて取り組むメンバーから多くの気づきを得ることに、沖縄のメンバーも期待している。若者同士だけでなく、企業や行政、多種多様なつながりにも発展させたいと意気込む。

 「外から招くことによって、沖縄を知ってもらいたいという気持ちもあるが、沖縄を良くするために自分たちができることに気が付くという面もある。地元の企業や行政も巻き込んで、一緒に取り組むつながりもつくっていきたい」

比嘉 麻里萌 – Marimo Higa – 琉球ミライ株式会社

沖縄育ち。高校卒業後カナダ、フィリピンへ語学留学。コスタリカ、ウルグアイへ”幸せとは”をテーマにした哲学留学の経験あり。世界の平和に貢献できる人になる事を掲げ、次世代教育としての沖縄市こども議会の運営や多文化理解のため国際交流支援に携わっていたが、現在は育児休業中。自身の育児経験や沖縄の貧困問題に着目したモンテッソーリエッセンスを入れた夜間保育園プロジェクトを準備中。