【動画】海底を大股に歩く“ロバの耳” 〜ミミガイ〜 <沖縄・海の生き物たちVol.38>


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貝殻からはみ出す体、緑と白のフリルも

アワビやトコブシといえば高級食材。その貝殻も美しい輝きを持っていることは、みなさん知っているでしょう。でも、これが生きている時の姿を海の中で見たことはありますか?

沖縄の海にもこの仲間が何種類かいます。中でも、サンゴ礁の浅瀬でたまに出会う大型種が、このミミガイです。貝殻は、アワビ類としては滑らかで細長く、10センチ程度。この形がロバの耳のようだというので、学名にロバという意味のラテン語がついています。でも、生きている時の体は貝殻を大きくはみ出して、体を取り巻くフリルや触角のけばけばが目立ち、ロバっぽさは全然ありません。大人の手のひらにどっしり乗るくらいの大きさの肉厚な足は、緑と白のまだら模様でなかなかの迫力。これを大股に波打たせるようにして、海底の岩場や砂地を滑るように歩いていきます。そのスピードは結構速い!

ミミガイのえさは、岩の上に生える海藻です。でも、ゆっくりご飯を食べているところはあまり見たことがありません。夜行性で、夜に出歩いているところを見つけることが多いですが、たいてい早足でどんどん進んでいきます。ひょっとして、お目当ての海藻を探し回っているのでしょうか。それとも、貝殻に全然納まらない大きな体が無防備なので、いつも早足になるのかな。

役に立たなそうな貝殻ですが、この貝殻には穴がありますね。これは、呼吸のために貝殻と体の隙間から取り込んだ水を吐き出すところ。そして初夏には、この穴から、オスは白い精子を、メスは緑色の卵を吹き出します。もりもり食べて、たくさん産んで、たくさん育ってくれたら嬉しいな。

Vol. 38 ミミガイ

Haliotis asinina

● 目:ウロダマヤドリガイ目 Lepetellida

● 科:ミミガイ科 Haliotidae

● 属:ミミガイ属 Haliotis

 

動画撮影: 
ミミガイ 2017年9月20日(糸満市 大度海岸)、2021年2月10日(浦添市 西海岸パルコ前)

動画撮影・編集&執筆

鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)

琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。

鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)

東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。

 

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