足を伸ばして体を引き寄せて…ぐんぐん進む
海草藻場には、小さな生きものがたくさん隠れています。手頃な岩をそーっと持ち上げると…裏側に、貝殻が膜に包まれた、小さな豆のような二枚貝がいました。マメアゲマキのなかまです。
貝にはみんな、外套膜(がいとうまく)という膜があります。例えばタカラガイの仲間は、外套膜を伸ばして貝殻を全部覆います。膜の表面には派手な模様やイボイボがあり、まるでイソギンチャクやウミウシのように見えることも。マメアゲマキも、同じようにイボイボの外套膜で全身を覆います。でも、普段は岩の裏側にひっそりと隠れているので、膜にどんな意味があるのかはよくわかりません。
岩からポロっとはずれたマメアゲマキは、隠れ場所を探そうと、結構よく歩きます。貝殻の中から足を伸ばし、周りの砂や海草に引っつけては体を引き寄せて進むんです。茶色く長い触手のような6本のイボを持つのは、ベッコウマメアゲマキか、その近縁種らしい。歩くときに力が入ると、6本のイボも伸びたり縮んだり。この様子が、カニが歩く姿に擬態しているかもしれない、という論文がありますが、どうかなぁ…みなさんにはカニに見えますか?
白いマメアゲマキもいました。足を伸ばしつつ、ジェット噴射を使って、こちらはスキップ歩き。たくさんの白いイボが伸びると、イソギンチャクっぽい。でも、これらはあくまで私たち人間から見たイメージ。海の中の小さな生きもの同士、お互いどんなふうに見えているのかなぁ。
Vol. 43 マメアゲマキのなかま
Scintilla spp.
● 目:マルスダレガイ目 Veneroida
● 科:ウロコガイ科 Galeommatidae
● 属:マメアゲマキ属 Scintilla
動画撮影:
マメアゲマキのなかま(褐色) 2021年7月11日(浦添市 西海岸パルコ前)
マメアゲマキのなかま(白色) 2020年8月2日(浦添市 カーミージー)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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