安易なバッシングに乗らない!正当な批判を行うために考えるべきこと モバプリの知っ得![79]

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シリアの武装組織に拘束されていた戦場ジャーナリストの安田純平さんが約3年4ヶ月ぶりに解放されたことが話題になっています。

ネット上では、無事に帰国したことを安心した人もいれば、日本政府の渡航自粛勧告を振り切って危険な地域に行った安田さんを非難する人も出てきました。

後世のためにも、戦場取材やジャーナリズムのあり方については広く考える必要があると思います。その一方で、安田さんへの非難の根拠には噂やデマも多く含まれており、情報の受け取り方、活用方法なども考える事案となっています。



噂やデマをもとに広がるバッシング



イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

安田さんをバッシングする材料として、戦場カメラマン渡部陽一氏の「戦場取材の掟」とした文章がSNS上で拡散されました。掟の内容は以下の通りです。

“1:最前線行く時は世界最強の軍隊の自走砲部隊と行動する
2:ゲリラが蔓延る地域には近づかない
3:戦場が流動的なところには行かない
4:国外の難民キャンプとかを中心に取材する
5:護衛がいても危ない所には近づかない
6:国境地域から一歩も紛争国の中には基本的に入らない
7:捕まるやつはその時点でジャーナリスト失格
8:ボディガードはその地域最強の奴を大金で雇う”

特に「7:捕まるやつはその時点でジャーナリスト失格」の部分が引き合いにだされ、拘束された安田純平さんを叩く動きが加速しました。

なお、発言主とされている渡部陽一さんはWebメディア「ハフポスト」の取材で、この「掟」についてフェイクだと否定しています。

ハフポスト 戦場カメラマン「渡部陽一さん、戦場取材の掟」はフェイク。本人が否定
https://www.huffingtonpost.jp/2018/10/25/senjo-watanabe-yasuda_a_23571198/

また、Twitterでは「安田純平の謎」とした文章も広く拡散しています。

“安田純平の謎
・拉致監禁した組織が知らんって言ってる
・過去5回も拘束されてるのに、すべて無事帰還
・監禁されてたのに解放後、病院で精密検査もうけない
・3年間監禁されてて歯が真っ白
・虫さされの跡すらない綺麗な身体で、痩せてもいない
・監禁中に何故か本人名義クレカで複数決済がある”

この該当ツイートは約18,000回リツイート(転送)され、こうした情報をもとに「安田純平は拘束されたふりをして、身代金を武装組織と山分けしたかもしれない」と荒唐無稽な「自作自演論」が飛び出してくるようになっています。

この謎も、少し考えたり調べたりするだけで、おかしいことが分かります。

  • 拉致監禁した組織が知らんって言ってる→組織が本当のことを言ってない可能性がある
  • 過去5回も拘束されてるのに、すべて無事帰還→実際は今回含め拘束は2件だけ
  • 監禁されてたのに解放後、病院で精密検査もうけない→根拠なし
  • 3年間監禁されてて歯が真っ白→映像越しでは正確には分からない
  • 虫さされの跡すらない綺麗な身体で、痩せてもいない→同上
  • 監禁中に何故か本人名義クレカで複数決済がある→勝手に使われた可能性も

根拠のない情報や噂を、「ファンタジー」として自分の中で楽しむことは個人の自由でしょう。しかし「ファンタジー」で他人をバッシングすることは名誉毀損であり、これからの報道のあり方を考える上でもノイズになります。

仮に自作自演だったのだとしたら、日本を初めとした複数の国家を欺くことになりますが、安田純平さんにそれが可能だと思うのでしょうか?また、自作自演のために3年以上も拘束されたふりをするでしょうか?

解放から約1週間後の11月2日、安田純平さんは記者会見を行い拘束された時の様子を自分の口で語りました。この記者会見を経てもなお、まだ分からないことや明らかになっていないことは多くあります。

ついこの間も、歌手の沢田研二さんがコンサートを直前になって中止になった理由として「反原発の署名を行おうとしたから」とした噂が広がり、それらをもとに「東京電力バッシング」「反原発陣営バッシング」が行われました。



【関連記事】信じたい情報だからこそ疑う モバプリの知っ得![78]
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-825570.html



コンサートの中止から3日後、事務所側が噂を否定しバッシングは落ち着きを見せました。沢田研二さんの件も、安田純平さんの件も、安易なバッシングに乗っかるのではなく、情報が出揃うまで待つ必要があります。

デマや不確かな情報をもとに、他人を批判することはとてもかっこ悪い行為です。
批判は、誰かを攻撃する「武器」ではなく、それをきっかけに前向きな考えや行動へつなげるための「薬」にもなります。

そのように使うためには、情報の正確性を強く意識し、まっとうな批判をみんなができりようにならなければなりません。

安田純平さんの拘束・解放をうけて、「ネットやSNSが発達した時代だから、危険地帯に行かなくても、現地の情報は現地の人たちが発信する」とした意見も出てきました。

しかしながら「戦場取材の掟」デマに代表されるように、誰でも自由に発信できるからこそ、不確かな情報が多く広がります。「戦場取材の掟」デマをハフポストなどのメディアが、渡辺さん本人に直接確認して訂正をしたように、直接取材する、確認することはネット時代だからこそ強く必要なのかもしれません。

いずれにしても、安易なバッシングに乗っかって「名誉毀損」の加害者とならないためにも、十分な情報が出るまで待てる、冷静に確認する姿勢が求められます。
 




 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」11月4日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。



【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/

 



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