「今年は一番の逆境だった。でもそんな機会はめったにない。僕にとっては大きなチャンス」。米大リーグで活躍したイチローさんが、2009年に史上初の9年連続200安打の偉業を達成した際の言葉だ
▼開幕直前、胃を痛めて故障者リスト入り。脚の故障で8試合欠場した。自分を追い込まず、体が動く範囲での感覚に従った。「精神的に7、8割の力加減で結果を残すこと。ここに少し近づいた」
▼ピンチを好機と捉える発想はコロナ禍でも生きる。苦境に立ち向かい、新しい分野を開拓しているのがコーカスが運営する「首里石鹸」。観光客が減り、昨年4月は全店舗の休業を余儀なくされた
▼ここで戦略を変え、ネット通販を強化し、店舗購入客をオンラインに誘導した。今後、県外の都市部に出店を予定。コロナ禍で撤退する店舗が多く「良い場所が次々と空いている今はチャンス」と緒方教介社長
▼糸満市の「タム」は、イベント用パネルの売り上げが減ったため、飛沫(ひまつ)防止のパーティション製作を始めた。既存の技術を活用し、注文に応じた製品を作る。「必要とされている物を作っているから、やる気があふれている」と社員は話す
▼「ピンチのときには身近な社員を総動員して、彼らを信じるんだ」とはアップルの共同創業者スティーブ・ジョブズの言葉。コロナ禍を乗り越えるヒントがここにある。