<金口木舌> タイ米はまずいか


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 冷害による米不足を補うためタイ米が輸入されたのは1993年のこと。「ぱさぱさしてまずい」と、評判はさんざんだった。少量の酒やサラダ油を加えて炊くなど工夫を凝らした

▼「泡盛を加えると、うまくなる」という料理研究家の助言を試してみた。バターで炒めたこともある。でも、試行錯誤はやめにした。そのままでも十分うまい。文句を言ってはタイの農家は困るだろう
▼「島産米」という言葉が懐かしい。県産米をこう呼んでいた。親類が「やんばるの新米だよ」と言って持ってきた二合ほどのお米をありがたく食べた。名護市羽地に広がる田園を思いながら
▼料理好きではないが、炊飯にはこだわる。最近は玄米を圧力鍋で炊く。もちきびを入れると風味が増す。そんなことをしながら稲作農家の苦労を考える。「お茶わんに米つぶを残すな」。20年前に他界した祖父の教えを守っている
▼「温暖化のおかげで北海道の米がうまくなった」という政権党幹部の発言に反発が広がった。「申し訳ない」と陳謝した別の幹部も、北海道産米の高評価に触れ「間違いなく気候変動の結果だと思う」と語っていた
▼空をあおぎ、時には荒天と闘いながら米を作る農家がいる。福島では原発事故による風評被害に苦しむ農家がいる。為政者を自覚するならば、農家の努力を直視してはどうか。米の味で軽口をたたく前に。