<金口木舌>座礁資産


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 声を詰まらせ涙ぐむ開催国イギリスの議長。国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議は「グラスゴー気候合意」を採択し、世界は一致して「脱石炭」を打ち出した

▼世界が地球温暖化対策に取り組む転換点となったのは2015年。全ての国が参加する「パリ協定」の採択だ。合意まで困難を極めた交渉を2年間現地で取材した
▼「温暖化は先進国の責任」と主張する途上国と、先進国が激しく対立。難しい合意を後押ししたのは、環境の変化にさらされる脆弱(ぜいじゃく)な国々の切実な声や市民社会だった
▼世界は温暖化対策の強化へ前進する。一方、25年間何も進まないのは普天間飛行場の返還。隣接の市街地に暮らす人々は命と安全が脅かされていると訴えているのに、だ
▼日本政府が普天間の移設先を「唯一」と強弁する辺野古は、今や軟弱地盤で護岸崩壊の恐れも指摘される。かつて「黒いダイヤ」と呼ばれた石炭は気候変動の中で価値を失い、「座礁資産」と言われる。膨大な工費をかけて完成も見通せない辺野古はもはや「座礁資産」でしかない。