<金口木舌>三権分立は不完全なじゃんけんじゃない


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 グー、チョキ、パー。多くの人にとって最初に覚えるゲームはじゃんけんだろう。なぜ包み込むだけでパーがグーに勝つのかいまひとつ納得いかないが、広く浸透している

▼18世紀フランスの哲学者、モンテスキューが「法の精神」で記した三権分立は、政治権力を立法、行政、司法に分割することで権力の集中を防ぐ考え方だ
▼この三権分立、しばしばじゃんけんに例えられるが、全くの別物。組み合わせによって常に勝敗が決まっている三すくみではなく、独立した機関が相互の監視とけん制によって権力の集中と暴走を防ぐ仕組みだ
▼民主主義の根幹を、じゃんけん以下のレベルにするつもりか。イスラエルのネタニヤフ政権は、最高裁の判断を国会の決議で覆せる条項を含んだ司法制度改革案を進めている。イスラエル国内では大規模な抗議デモが続く
▼裁判所をグー、国会をパーとして勝敗を固定してしまえば、権力の暴走に歯止めは掛けられない。行政に対する司法判断に首をかしげることが多い日本、沖縄にとっても、遠い異国の話ではない。