<金口木舌>ゼロにできるリスク


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 「一つの災害が他の災害を誘発し、それぞれが原因となり、あるいは結果となって全体としての災害を大きくする」。2011年3月11日の東日本大震災。中央防災会議がまとめた最終報告はこう指摘し、防災、減災の重要性を説いた

▼震災の死者は1万5900人、行方不明者は2523人、避難中の体調悪化や自殺などによる震災関連死は昨年3月時点で3789人。福島県の一部は帰還困難区域のままだ。地震、津波、福島第1原発事故の影響は今も続く
▼5万人を超える人が犠牲になったトルコ・シリア大地震は発生から1カ月が経過したが、被害の全容は分かっていない。シリアは内戦が影響し、支援が遅れた
▼自然災害をゼロにすることはできない。そこで避難場所を確認したり、非常時の食料・物資を蓄えたりする減災の取り組みは広がりつつある
▼「災害を大きくする」効果をもたらした原発事故、戦争という人為的リスクはゼロにできるはずだ。被災者、犠牲者を一人でも減らすため、私たちにできることはまだ残っている。