米国の第1回アカデミー賞授賞式は89年前のきょう、ロサンゼルスのホテルで開催された。15分ほどで終了し、中継もなかった
▼豪華になった現代の授賞式はスターの発言が注目される。ことしはセクハラの撲滅が叫ばれ、昨年は米大統領の排外的な姿勢への批判があった。同じエンターテインメントの世界でも日本では政治的な発言を耳にする機会は少ない
▼その中にあって、沖縄の基地問題や被災地の復興、原発問題を真っ向から取り上げたのがお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」だった。昨年末、全国放送の番組でネタを披露し、注目を浴びた
▼基地問題のネタの初披露はその1年ほど前、那覇市内の劇場だ。鳴りやまない拍手を背にコンビの村本大輔さんが上手に引き上げると、舞台スタッフから「ありがとう」と言われた
▼舞台袖で目に涙をためて握手を求めたその男性に直接話を聞いた。「演者に感想なんて言ってはいけないけど、よく言ってくれたと伝えたかった」という。テレビでも演じてほしいと話し、村本さんは実現させた
▼第1回アカデミー賞で特別賞を受けたチャップリンは後に「殺人狂時代」で戦争殺人を批判。そのヒューマニズムは色あせない。村本さんはネタで「国民の意識の低さ」が危機的なのだと投げかけた。「お前たちのことだ」と突き付けた問題意識は、私たちにも鋭さを増して響く。