仕事場の7階から階段で6階に下りる。用事を済ませ、階段で戻ろうとして、気付くと5階にいることがよくある。運動不足の体はわずか1階でも階段を上がることを無意識に敬遠するらしい
▼人間は気を付けないと、楽な方向に、都合のいい方向に行動してしまう。たわいもない日常の一こまならいい。政治や基地の問題では多くの人を傷つけ、社会にも悪影響を与える
▼環境省が世界自然遺産の登録推薦を取り下げた経緯もそうだ。国は管理権が及ばない米軍基地の存在から目をそらした。だが米軍北部訓練場跡地を除いて推薦したため「待った」をかけられた。跡地の汚染調査を行い未返還の基地で米軍と協定を結ぶなど、課題を直視した対策が不可欠だ
▼米軍機事故に関する米軍の対応も同様だ。1968年に発生した九州大学電算センターに米軍戦闘機が墜落した事故などでは日本側も現場検証ができた。一方、2004年8月13日の沖国大米軍ヘリ墜落事故では米軍側が日本側の捜査を排除した
▼重大事故を受けて日米が合意した米軍機事故のガイドラインは、沖国大での事故を巡る米軍の異例な対応が標準化された。九州大の事故から2日で50年。改めて基地が沖縄に及ぼす不条理を思う
▼間違いに気付き、声を上げなければ、物事は一方の都合のいい方向に流れてしまう。それでは到底、上の段階には上がれない。