有料

首里系「花売の縁」披露 国立劇場研究公演 奥深さと美しさ


社会
首里系「花売の縁」披露 国立劇場研究公演 奥深さと美しさ 花売の縁で乙樽(左・比嘉いずみ)、鶴松(中央・仲宗根朝子)と再会する森川の子(右・上原崇弘)=9月30日、浦添市の国立劇場おきなわ
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 国立劇場おきなわの研究公演「花売の縁」が9月30日、浦添市の同劇場で開かれた。金武良章から首里士族の芸風を継承した知念績有(せきゆう)が全演目を指導した。琉球王府時代に上演されたものに近い首里系の組踊の上演は、琉球芸能の伝承の歴史と奥深さを感じさせた。

 組踊は尚泰王の冊封以降、首里の御殿殿内(うどぅんとぅんち)で受け継がれた首里系と、那覇の芝居小屋で大衆向けに磨かれた商業演劇系に分かれる。現在上演される組踊のほとんどが商業演劇系だが、第2部組踊「花売の縁」は首里系での上演だ。

 知念によると、首里系で女の歩みは頭の高さが波のように上下する。夫である森川の子(上原崇弘)を探す際の乙樽(比嘉いずみ)と鶴松(仲宗根朝子)の歩みは、ふわりとした柔らかな美しさを感じた。男はすり足ではなく「つま先から突っ込むように」。すり足より自然に見えた。首里系でせりふは「むの言(い)ゅるぐとぅ」。話し言葉に基づいて発声する。唱えの早さも場面で明確に異なった。森川の子と会った鶴松の唱えは少し早まっており、父との再会に高鳴る胸の内が伝わる。ほか立方は、髙井賢太郎、廣山ひさき、玉城匠。地謡は歌三線が大城貴幸、仲嶺良盛、加屋本真士、箏が林杏佳、笛が豊里美保、胡弓が大濱麻未、太鼓が宮里和希。

 第1部の「唱えと音楽による執心鐘入」では、地謡も唱えを担当した。今では分業の立方と地謡(じかた)をどちらも経験した琉球王朝時代に倣ったもの。唱えを担当したのは岡本凌、下地心一郎、大城、仲嶺、加屋本、宮里。

 (田吹遥子)